我々は,窒素循環型システムのための中低温作動型窒素還元およびアンモニア酸化触媒の開発を目的として研究を進めてきた.低温域用電気化学的窒素還元触媒の開発において,本年度は窒化チタンまたは窒素ドープ量を変化させたTiO2にRuナノ粒子を担持した触媒を調製し活性を評価した.具体的には,TiO2ナノ粒子(P25,日本アエロジル)を,管状炉を用いて,1~4時間アンモニアを通気させることにより窒化チタンまたは窒素ドープTiO2を調製した.これをRuCl3と混合して懸濁液とした後,タンニン酸を還元剤としてアモルファスRuナノ粒子が担持された触媒を得た.電気化学的活性を評価したところ,窒素ドープをしていないTiO2に担持したRuナノ粒子を用いたほうが,窒素還元能が高いことが明らかとなった.窒素ドープしたものは,競争反応であるプロトン還元が優勢に起こることが示された. 中温域用の電気化学的窒素還元触媒の開発においては,中温域電解セルの約3倍の大面積化を達成し,より精度の高いアンモニア定量が可能となった.また,電解に使用する中温域用電解質も改良し,長時間の電解に耐えうる評価系を構築することができた.具体的には,中温域用複合電解質は以下の手順にて合成した.リン酸二水素セシウムと85 wt%リン酸, ZrO2微粒子を混合したものを電解質前駆体とし,900℃で熱処理し,急冷することにより合成した.この長寿命の電解質は,従来の電解質よりプロトン伝導度も高く,ガスクロスリークが低いことも明らかになった.アンモニア電解合成は,燃料電池型二室式セルを用いて200℃で実施した.
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