昨年度まで,A1100合金とABS樹脂の摩擦攪拌重ね合わせ接合,A1100合金とポリカーボネート樹脂の摩擦攪拌重ね合わせ接合並びに,A1100合金とポリカーボネート樹脂の摩擦攪拌突合せ接合について,工具の形状,工具の回転速度,接合速度等の条件を変化させて作成した継手の表面性状やせん断強度を評価した. その結果,接合する合金の種類,接合の種類(重ね合わせ接合.突合せ接合・点接合)によって最適な接合条件は大きく変化することが見て取れた.また,作成した継手の強度は,主としてアンカー効果によって担保されていることが示されたため,アンカー効果をもたらすための金属合金の流動性に注目してこれを引き起こすための接合の際の表面温度について調査をした.測定した結果,特定の条件下では,金属合金の再結晶温度に達していることが示され,この温度下における樹脂の状態と,金属合金の状態が攪拌に適している状態の時に理想的なアンカー効果を持つ継手が得られることがわかってきた.温度は高すぎると,工具が組織を掻き出してしまい,接合部は溝が残ってしまう.一方,温度が低いと,主として金属合金に十分な変形が起きずにバリや切粉が発生して,接合に至らない.したがって,接合に最適な条件は,合金の種類や樹脂の種類によって大きく異なってくることが見て取れた. 本年度はこれまでのこうした結果を踏まえ,実際に自動車産業等に用いられている金属材料であるアルミ合金A5052と,炭素繊維強化複合材料積層板との接合に取り組んだ.炭素繊維強化複合材料は,熱可塑性樹脂(ナイロン66)を用いたものであるが,この材料に関しては,初年度に実験を行い,樹脂の軟化温度が極めて低いことからA1100とは良い接合が得られなかった.しかしながら,炭素繊維布で強化されていることからその特性が変化し,比較的良好な接合結果を得ることができた.
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