研究課題
光・電子部品産業ならびに医療機器向けに、安価で高性能光学ガラス部品(複雑形状を有する3次元構造ガラス)の開発が望まれている。しかしながら、製造プロセスの複雑さ、多大な熱エネルギー消費等の問題により、高純度3次元シリカガラスの製品化は行われていない。本研究ではLED光照射による3次元構造シリカガラス製造プロセスの構築を目的とする。昨年度は分散媒に蒸留水を用い、シリカ粒子のサイズや溶液中のpHの違いによる分散、凝集ならびに粘性挙動について実験を行い、考察した。本年度は更に、種々分子構造の異なるモノマー((A)単官能アクリルモノマー,(B)多官能アクリルモノマー,(C)単官能メタクリルモノマー)と光重合開始剤の分子量や添加量を変化させ、シリカ分散性と粘性、光硬化特性を評価した。その結果、モノマーの分子構造の違いによる分散濃度や光硬化挙動が異なることが明らかとなった。具体的にはいずれのモノマーを用いた場合、シリカ粒子含有量の増大により、粘度が上昇した。(B)では、他の(A),(B)のモノマーより高い粘性を示した。その理由として、多官能モノマーの分子構造は三次元架橋構造を有しており,シリカ粒子が分散した際の分子間相互作用が強いためであることがわかった。また、アクリロイル基を二つ有するため、光照射の際、光硬化時間に要する時間が短いことがわかった。(A),(C)モノマー中のシリカ粒子分散挙動は双方とも末端に水酸基を有しているため、シリカ粒子表面の水酸基と親和性が高いため、みかけの粘性挙動も同様な振る舞いを示したと考えられる。しかし、(A)と(C)の光硬化挙動は異なり、(C)の分子構造がラジカルの発生を阻害するため、(A)より光硬化が緩やかに進行することが実験的に明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究を進めていく中で、機能性を有した3次元構造体製造プロセスを見出したことにより特許出願を行った。WO2018/235943 無機成形体製造用組成物、無機成形体の製造方法
光照射により得られた硬化性シリカ/モノマーコンポジットガラス前駆体(固体)の粒子充填密度や構造、物性(機械的強度、モノマーの熱分解挙動等)を観測する。最終的には様々な高温、真空状態における焼結挙動とそれにより得られた光物性(透過率等)の関係について明らかにする。
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