研究課題/領域番号 |
17K06882
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
水野 章敏 函館工業高等専門学校, 一般系, 准教授 (10348500)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バルク金属ガラス / 無容器ガス浮遊法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、金属元素を主成分とするバルク金属ガラスを対象とし、ガラス形成能に及ぼす非金属元素の微量添加効果を巨視的および微視的観点の双方から解明することである。具体的には、構成元素数の最も少ない二成分系バルク金属ガラスについて、酸素や窒素などの微量添加元素がガラス形成能に与える効果を過冷却液体の熱力学的性質および局所構造の知見をもとに明らかにすることを目的としている。 昨年度に引き続き、直径2mm以上のバルク金属ガラス形成のために重要な雰囲気制御を特化した無容器ガス浮遊装置の改良を行った。特に、ステンレス製チャンバーの真空度を改善した。また、金属ガラス作製のための条件として、ガラス形成組成と臨界冷却速度の関係を明らかにし、熱分析により取得したガラス転移温度と結晶化温度から過冷却度との関係、さらに添加酸素量との関係について整理を行った。 研究対象としては、既にバルク金属ガラスの作成の実績のあるZr-Cu系合金をはじめとして、Hf-Cu系やNi-Nb系などのすでに先行研究においてバルクガラス化の報告のある合金を中心に無容器凝固によるバルクガラス化を試みる計画であったが、現時点ではバルクガラス化に成功していない。また、使用する金属材料中に含まれる元素分析を行い、放射光を利用した構造解析を実施する計画であったが、作製した試料数が限られたことから分析を実施できていないため、これまですでに得られているデータについて解析し、ガラス形成過程における構造変化について考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、昨年度に引き続き、既にバルク金属ガラスの作成に成功しているZr-Cu系合金をはじめとして、Hf-Cu系やNi-Nb系などの高融点合金を中心に無容器凝固によるバルクガラス化を試みる計画であったが、現時点ではバルクガラス化に成功していない。この一因として、合金を融解するために使用している加熱用レーザーが経年劣化により強度が落ちたため、十分に合金を融解できないことがある。 今年度は使用する金属材料中に含まれる元素分析および放射光X線回折実験による構造解析を実施する計画であったが、作製した試料数が限られたことから分析を実施できていない。雰囲気制御に特化した無容器ガス浮遊装置の構築についておおよそ達成しているものの、研究の進捗状況を遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現時点でバルクガラス化に実績のあるZr-Cu系合金を主なターゲットとし、添加酸素量とガラス形成能との関連を明らかにしていく。また、他の合金系でガラス化に成功しない要因として、加熱用レーザーの強度不足により融液を充分に高温にできていないことが挙げられる。したがって、光学系の再構築および補助レーザーの導入により、Hf-Cu系やNi-Nb系などの高融点合金のバルクガラス化を試みる。また、溶融状態からの冷却速度を増大させるため、熱伝導率の高いガスを混合するシステムを無容器ガス浮遊装置へ導入し、ガラス形成率の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において所属機関における実験室を移動する必要が生じたため、当該課題を遂行するための実験装置を構築し直すこととなった。したがって、必要な電源や環境整備のために実験が可能となるまでに数ヶ月を要したため、研究実施計画が大きく変更となり、購入予定品および外注により実施する予定であった組成分析についても保留することとなった。また、必要な試料の作製に至っていにため、出張を伴う実験についても実施が困難であった。現在においては実験環境が整いつつあるため、先送りとなっていた計画にしたがって予算を使用する予定である。
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