研究課題
本研究では、金属元素を主成分とするバルク金属ガラスについて、ガラス形成能に及ぼす非金属元素の微量添加効果を巨視的および微視的観点の双方から解明することを目的とした。特に、構成元素数の最も少ない二成分系バルク金属ガラスであるCu-Zr系合金を対象として、試料中に含有する酸素量を0.2at.%程度から0.3at.%程度までわずかに増加させることよりガラス形成能が向上することを示した。特に無容器凝固法を用いることでガラス形成過程の冷却速度を任意に変化させ、ガラス形成が可能な臨界冷却速度の見積もりを可能とした。臨界冷却速度の見積もりおよび熱分析によりCu-Zr系合金のガラス形成能の向上について確認した。また放射光X線を使用した時分割X線回折実験を実施することにより、合金が含有する酸素量のちがいにより、凝固過程におけるガラス形成およびガラス母相に析出する結晶相を直接観測することに成功した。Cu-Zr系合金のガラス形成能向上における酸素の効果としては、Zr融体への酸素の溶解度が高いことからガラス形成を妨げる酸化物が形成されにくいこと、酸素の溶解により合金液体の粘性が増加することと関連付けて定性的に説明した。Cu-Zr系以外の合金として、Ni-Zr系合金、Cu-Hf系合金、Ni-Nb系合金、Fe-B系合金について、酸素量あるいは窒素量を変化させて無容器凝固法を用いたバルクガラス化を試みたが、残念ながらバルクガラス化には至らなかった。今後はCu-Zr系合金以外の合金系について、非金属元素の微量添加効果について明らかにすることができれば、より容易にバルクガラスの作製を実施することが可能な合金群が発見されることが期待される。
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physica status solidi (b)
巻: 257 ページ: 2000140~2000140
10.1002/pssb.202000140