研究課題/領域番号 |
17K06883
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高橋 明宏 都城工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90370056)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 火山灰有効利用 / 溶接スパッタ付着防止剤 / 溶接接手 |
研究実績の概要 |
申請者は、平成20年から溶接スパッタ付着防止剤の開発的研究を進めている。その防止剤は、南九州に広く分布する火山灰に最適な配合量の水を混合させるだけの、大変簡易的な製法で実現できる。本研究では、溶接継ぎ手信頼性の定量評価に基づく「オールグリーン溶接スパッタ付着防止剤の高度化と溶接部位信頼性の実証」を研究目的とする。 平成29年度は、火山灰由来のシラスバルーンと水によるフラクタル構造塗布剤の実現と付着防止効果の確認を行った。各配合割合のシラスバルーンと水の混合サンプル、計33ヶを作製し、それぞれ粘性、比熱(推定)を求めた。更に一部の塗布剤サンプルを用いたときの粗大な凝固スパッタと母材表面との接触角を観察、測定した。 平成30年度は、新燃岳、桜島火山灰の粒子分級工程、スパッタ付着防止効果の実証を行った。すべての塗布剤サンプルを用いたときの粗大な凝固スパッタと母材表面との接合状態を慎重に観察し、接触角の測定を行った。またJISに準拠した引張・曲げ・衝撃試験による力学特性やき裂発生に関する検証を行った。更に、外観試験、超音波探傷そしてカラーチェック法の非破壊試験を実施した。次いで、当初の計画にはなかったが、曲げ荷重-変位線図において弾性限界点での微小き裂発生に類した荷重変動が観察されたため、一部のサンプルに対してアコースティックエミッション評価を実施し、材料表面層からのき裂発生情報を取得した。その結果、JISに抵触し、かつ早期破壊を助長することのない表面き裂であることがわかった。また新燃岳、桜島の火山灰は、シラスバルーンには高い付着防止効果が発現することはなかった。最終的に、29・30年度二年間は当初計画の90%の達成と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は他の火山灰粒子(新燃岳、桜島)を用いた計66ヶのサンプルをすべて作製し、スパッタ付着防止効果の確認を実施できた。最も高い付着防止機能を有するのはシラスバルーンであった。また粗大スパッタと溶接母材との界面観察を行い、接触角を求めた。さらに塗布剤サンプルに対する引張・曲げ・衝撃などの破壊特性を評価した。一方で視覚検査、超音波検査、アコースティックエミッション評価を実施した。これら破壊評価および非破壊検査から、早期破壊を誘引する重大な表面き裂の発生には至らないことがわかった。三種の火山灰に関するフラクタル構造因子の決定が十分完了しているとは云えず、この点は次年度に達成したい。 研究成果については、学術的な国際シンポジウム等(ICSTE2018, IJSEE2018)にて発表した。この中で4th ICSTE2018では、Best Paper Awardの受賞を受けた。また、学術論文一報を投稿中である。 これまでの二年間は総合的に90%の達成度であると考えており、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、前年度と同様、溶接継ぎ手のアーク溶接接合部に関する評価を実施するが、主に動的試験に基づいた信頼性検証を行う計画である。また高精度非破壊X線CT検査等にて調査し、さらに地元企業、県工業会と協議し、拡散性水素量分析も行う。水素検査には、JIS Z3118法による鋼溶接部の水素量測定方法に準拠し、100g当たりの拡散性水素量を調査(外部委託)する。なお、火山灰粒子のフラクタル構造因子測定が十分完了していないため、当初計画の完遂を強く目指す。 2019年度は、一連の研究成果を機械材料系などの関連のある学協会での発表を目指し、発明性の高い研究成果と判断した場合には、特許出願等について関係者との連携をとった上でその後の展開を検討したい。また最終年度にあたって、研究成果の社会還元のために学術論文誌への投稿を積極的に行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は平成30年度実支出額(190万円)のおおよそ8.7パーセントである。これまで二年間に計画した研究物品の購入と、それに基づく研究の進行は、この自己評価として90%の進捗(二年間)であるとみている。したがって2019年度実支出額も適切な物品および旅費等への執行を目指し、次年度使用額に関しては高精度CT観察や拡散性水素分析のための資材購入等などに使用したいと考えている。
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