研究課題
平成31年度(令和元年度)は、前年度までに開発した新しい熱力学量(eSP値)の化学工学数理モデルへの組み込みによる抽出分離予測についての理論実装を検討した.具体的には,既往の報告では相関モデルしかない状況であった超臨界二酸化炭素中の固体溶質の溶解度の理論計算法に関して,eSP値に基づく数学的表現を組み込んだ新たな推算モデルを独自開発することに成功した.また,これをエタノールなどの助溶媒(エントレーナー)を含む系に発展させた推算モデルも検討することができた.その基礎となる超臨界二酸化炭素中の固体溶質の溶解度については,温度,圧力,モル体積に関する無次元数(還元値)に基づく数学的表現が可能だったことは既に前年度までの成果でまとめたが,このモデルにエントレーナー濃度による指数的溶解度の増加効果を組み込むことができた.これにより,当該分野を先導する理論モデルの開発に成功した.その一方で,ビールホップエキスやシソエキス中の成分の分離を目的とした亜臨界溶媒分離技術を予測するためのeSP値を組み込んだ新しい気液平衡比の相関モデルも開発している.これを化学工学的平衡段モデルに組み込むことで,亜臨界溶媒分離に関する実験結果を良好に再現する数理モデルを構築することができた.以上より,抽出分離予測に必要な高圧基礎物性とeSP値を深く関連付けることができた.将来的には,別視点である二重境膜説モデル等速度論モデルへのeSP値の組み込みにより,非定常の亜臨界溶媒分離の理論予測も含めて検討を実施していきたいと考えている.
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Chemical Engineering Science
巻: 214 ページ: 115361~115361
10.1016/j.ces.2019.115361
KAGAKU KOGAKU RONBUNSHU
巻: 45 ページ: 238~243
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