研究課題/領域番号 |
17K06885
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉川 史郎 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (40220602)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | テイラー渦の安定性 / 同心二重円筒型反応装置 / 粘弾性流体 |
研究実績の概要 |
同心二重円筒間流れにおけるテイラー渦の形成と安定性について試験流体として粘度調整のためにグリセリンを水に転化して濃度を20wt%としたニュートン流体である溶液と,その溶液にポリエチレンオキシド(PEO),ポリエチレングリコール(PEG)をそれぞれ1000PPM添加した粘弾性流体である溶液を用い,PIV法による可視化実験により検討した.30年度に外径60mmの内円筒の長さをそれまでの2倍の160mmとしたスケールアップでは渦数は単純にほぼ2倍となることが確認されたが,粘弾性流体については溶液調製後の経過時間によってPEOとPEGで渦の安定性の傾向が逆転する結果となった.そこで,令和元年度は粘弾性流体の調整後の経過時間と粘弾性,および渦の安定性の関係に着目して研究を行った.具体的にはそれぞれの高分子を添加したグリセリン水溶液を調整した後,同心二重円筒の内円筒と外円筒の間に満たし,内円筒を一定の速度で回転させ続け,1日後から4日後まで,1日おきに渦流の可視化画像を撮影するとともに,流体を少量採取し,粘弾性測定装置により損失弾性率と貯蔵弾性率を測定し,それらの比である損失正接が経過時間とともにどのように変化するかを検討した.その結果,調整後3日目まではPEGとPEOを添加した流体では損失正接が広いせん断応力範囲で変化し,その値の平均値がより小さく,粘性に対して弾性が顕著な性質を示す流体の方がテイラー渦が安定することが確認された.さらに調整後4日が経過すると損失正接はせん断応力により大きく変化することはなくなり,PEGとPEOの差異が小さくなり,渦の安定性も大きな差がなくなることが確認された.この結果より,令和2年度には流体調整後4日程度経過した後の安定したテイラー渦が形成された状態で流通系流通系反応器としての性能評価を検討する段階に進む予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では令和元年度に流通反応器としての性能を滞留時間分布の測定などによって評価する予定であったが,平成30年度に溶液調整後の経過時間により流体物性が変化し,それに伴う粘弾性特性の変化により渦流の安定度が変化することが明らかとなったため,元年度は当初予定の反応器としての性能評価に着手する前に溶液調製後の経過時間と流体の粘弾性および渦の安定性の関係に着目したため,やや遅れることとなった.
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今後の研究の推進方策 |
元年度に試験流体調整後4日が経過するとPEG,PEOのいずれを添加した場合も粘弾性に大きな差異がなく,同心二重円筒間のテイラー渦が比較的安定することが確認されている.このことから,2年度は溶液調整後4日経過後の流体を用いて二重円筒装置を流通系連続反応器として操作した際の特性,特に滞留時間分布を明らかにする.滞留時間分布測定実験は二重円筒装置の上部,下部に流体流出口,流入口を設置し,二重円筒間を試験液体で満たし,内円筒を所定回転数で操作している状態からトレーサーのKCl水溶液をステップ状に流入させ,出口に白金黒メッキを施した白金電極対を挿入し,液体中の電気抵抗を連続的に計測する.測定された抵抗値の経時変化パーソナルコンピュータに記録し,解析を行う.幾何学的条件の異なる二重円筒装置それぞれについて水,グリセリン水溶液,高分子を添加したグリセリン水溶液を試験流体として渦列の流動状態解析から安定操作可能な範囲についてトレーサー流量をパラメータとして変化させて実験を行う.測定されたステップ応答曲線を数値微分することにより滞留時間分布を求め,さらに完全混合槽列モデルと比較し,対応する槽数を求める.トレーサー流量が大きすぎると渦列を乱すことが考えられることから,幾何学的条件,内筒回転数などの操作条件によって槽列モデルが適用できるトレーサー流量範囲が限られることが予想される.そこで,さらなる解析として各条件において生じる渦数に応じた槽数のモデルで滞留時間分布が記述できるトレーサー流量範囲を操作可能範囲として明らかにすることを試みる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
より安定した渦を形成するテイラー渦流反応装置の構築を達成することを目的として装置長を2倍にすることにより渦列数も2倍となる安定した流動場を形成させることのできる流体への添加高分子の種類,濃度について検討したところ,溶液調製からの経過時間により流体物性が変化し,それに伴う粘弾性特性の変化により渦流の安定度が変化することが明らかとなったため,元年度は予定の反応装置としての評価まで到達できなかったため次年度に繰り越す必要が生じた.2年度には当初予定していた流通系反応器としての性能評価を行うために必要な実験装置の作成,電解質濃度を計測するために必要な電極,試験流体調整のための試薬などの購入に使用する予定である.
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