令和元年度は磁場処理を利用したフィラーの配向状態の操作による、ポリイミド複合材料の高熱伝導化について、磁場処理温度と最終的な複合材料の有効熱伝導率の関係を調べた。昨年度と同様フィラーにはマグネタイト微粒子を担持した六方晶窒化ホウ素を用い、磁場形成には2つのサマリウムコバルト磁石を用いた。また、フィラーの配向状態の変化はX線回折により得られる六方晶窒化ホウ素の(100)面と(002)面のピーク強度比の変化から推測した。その結果、磁場処理温度が80 - 100 ℃では、最終的な複合材料の有効熱伝導率の明確な向上が確認されたのに対し、150 ℃以上で磁場処理を行ったものは有効熱伝導率の向上は見られなかった。また、X線回折の結果も同様に、80 - 100 ℃の処理では、(100)面の相対ピーク強度は向上したが、150 ℃以上の磁場処理ではフィラーの配向状態の変化はほとんど確認されなかった。この結果は、磁場処理温度が高い場合、溶媒除去速度が大きく、フィラー+ポリアミド酸溶液の粘度が急激に上がり、フィラーが動きにくくなるためであると思われる。 また、磁場処理による電気絶縁性の変化を調べた結果、磁場処理を行った複合シートは、磁場処理なしの複合シートに比べ、同じフィラー濃度において絶縁破壊電圧が明確に低下した。したがって、得られる複合材料の電気絶縁性の維持が今後の課題となる。一方で、本結果は磁場処理によって熱伝導パスが形成されることを示唆するものであり、ポリイミドの高熱伝導化に対して磁場処理の有効性が確認できた。
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