研究課題/領域番号 |
17K06889
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片桐 誠之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00345919)
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研究分担者 |
入谷 英司 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60144119) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メンブレンリアクター / 難分解性廃水 / 白色腐朽菌 / 酵素 / 食品廃棄物 / 生理活性物質 / 限外濾過膜 / 固形燃料 |
研究実績の概要 |
本研究では、難分解性の環境汚染物を分解可能な酵素を、食品廃棄物を有効活用した白色腐朽菌の培養により効率よく産生する手法を確立するとともに、産生酵素を精製することなく、培養液をそのままメンブレンリアクターに投入し、膜の分離機能により酵素をリアクター内に動的に固定して、難分解性廃水の連続的な処理を可能とするシステムを構築する。また、処分が必要となる余剰菌から生理活性物質を抽出する手法を確立し、単なる水処理に留まらず、食品・菌・酵素の全ての有効活用を可能とする、これまでに類を見ない全く新しい膜利用型高度処理プロセスを開発することを目的とする。今年度は、これまでに確立した「食品廃棄物を用いる有用酵素の調製システム」、「酵素と膜を用いる環境汚染物の処理システム」、そして「余剰菌の減量および生理活性物質の抽出システム」のハイブリッド化を行い、システムの最適化を試みた。代表的な食品廃棄物である廃糖蜜を栄養源として用いる白色腐朽菌カワラタケの培養により染料脱色酵素が効率よく得られ、さらに酵素の産生量を高濃度に維持するために、培養液と菌体の定期的な引き抜きが必要であることがわかった。培養液には酵素が含有されており、限外濾過膜を設置したメンブレンリアクターで着色廃水の連続的な脱色処理を行うことができた。引き抜いた菌体は、5 MPa以上の圧力で圧搾することで顕著な含水率低下が生じ、7 MPaではケーク含水率は約20%程度まで下がった。圧密脱水挙動は、Terzaghi-一般化Voigtモデルで記述され、二段階のクリープを考慮する必要があることを明らかにした。搾液には生理活性物質が検出され、圧搾操作により菌体内から有用成分が搾出されることを明らかにした。脱水ケークは極めて低含水率なため、固形燃料としての有効活用の可能性も示唆され、破棄物を排出しないプロセスの構築に向けて重要な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究成果により、環境汚染物質の連続的な処理と、余剰菌の高度脱水による減量化および生理活性物質の回収が可能となり、順調に成果が得られつつある。しかしながら、研究目的をより精緻に達成するため、再現実験の実施や研究成果を社会に広める活動が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
成果は順調に得られつつあるが、本研究の目的をより精緻に達成するため、再現実験の実施や処理対象物の範囲拡大を図るとともに、関連学会への参加や論文の投稿を行い、研究成果を社会に広める活動を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究室で保管していた試料や試薬なども利用して研究を進めたため、当初の計画より低予算で成果を得ることができた。 (使用計画) 次年度は、処理システムの最適化を行い、様々な難分解性廃水への適用を試みる予定であり、より多くの難分解性物質を用いた検討が必要となるため、未使用分をこの費用にあてる。また、研究成果を広く公表するため、学会等での研究発表を積極的に計画する。
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