新しい前駆体として、ミモザ由来のタンニンを試みた。タンニンの薄膜を多孔質セラミックス表面にコーティングできたが、焼成時のタンニン層の収縮が大きいため、炭化膜には大きなクラックが生じた。コーティングや焼成条件を変えても、クラックの無い膜は形成できなかった。一方、タンニンにオルガノソルブリグニンを加えたところ、欠陥が無く、分子ふるい的な透過性能を示す炭素膜が得られた。また、オルガノソルブリグニンから作成した膜と同様に、コーティング液に鉄を加え、低温焼成条件を用いることで、水素透過性は維持しつつ、水素選択性が向上した。さらに、タンニン前駆体に由来すると思われる、二酸化炭素の得意な吸着性が発現した。ミクロ多孔質な膜では、単成分試験で得られる透過性の比から推測する分離性と、二成分分離での分離性が大きく異なる場合がある。そこで、CO2/N2、CO2/CH4の二成分混合ガスの分離試験を行った。CH4透過性は極めて小さく検出限界程度であったため、CO2/N2 系で操作条件(圧力、流速)の影響を検討した。CO2/N2分離性能は操作圧力の低下に伴い増加し、供給側2気圧、透過側1気圧の条件で、分離係数190を示した。これは、単成分の透過性比から計算した分離係数よりも5倍以上大きい値であった。膜細孔に二酸化炭素が選択的に吸着することで、窒素の透過を阻害したことが示唆される。また、膜は空気中の水蒸気を吸着し、ミクロ細孔が水により閉塞するため、透過性が著しく減少した。吸着した水の除去は、室温での減圧では不十分で、110℃程度の加温が必要であった。低温焼成しているため、膜が親水的な可能性がある。
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