研究課題/領域番号 |
17K06894
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩井 芳夫 九州大学, 工学研究院, 准教授 (80176528)
|
研究分担者 |
米澤 節子 九州大学, 工学研究院, 准助教 (50294898) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 拡散係数 / 超臨界二酸化炭素 / ポリマー / 紫外可視分光法 / 超臨界流体含浸法 / ポリメタクリル酸メチル / アントラキノン |
研究実績の概要 |
平成29年度に作製した装置を用い、超臨界二酸化炭素雰囲気下におけるポリメタクリル酸メチル中のアントラキノンの拡散係数を温度45、55℃、圧力11~20MPaの条件で測定した。その結果、各温度において圧力が上昇するほど拡散係数も大きくなった。また、温度依存性は圧力によって異なり、高圧では温度が高いと拡散係数は大きいが、11MPa付近では温度が高いと拡散係数は小さくなった。さらに、超臨界二酸化炭素中のアントラキノンの溶解度を測定した。 拡散係数の相関のため、自由体積モデルを3成分系に拡張した。このモデルにより、拡散係数の測定値を良好に相関できることが分かった。 分子動力学シミュレーションを用いてポリエチレン+二酸化炭素+溶質(ブタン、シクロヘキサン、およびヘキサン)の3成分系の分子の軌跡および拡散係数を計算した。その結果、二酸化炭素および溶質の拡散は空隙での停滞と、近接する空隙へのジャンプ運動の繰り返しで進行していることが確認された。同計算条件におけるブタン、シクロヘキサン、ヘキサンの拡散係数を比較したところ、ブタンの拡散係数が平均して一番大きいことが分かった。これは、ブタンの方がより炭素数が少ないため、炭素鎖が短く拡散する際に阻害を受けにくかったためと考えられる。また、ヘキサンとシクロヘキサンは拡散係数に大きな違いは見られなかった。 当研究室で提案した新たな活量係数式を用いて活量係数と気液平衡の相関を行い、NRTL式およびUNIQUAC式と比較した。その結果、新たな活量係数式は高い精度で相平衡を相関できることが示された。さらに、新たな活量係数式にグループ寄与法を適用し、4つのグループのパラメータを決定したところ、様々な系の気液平衡を良好に計算できることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではポリマーとしてポリエチレンを用いる予定だったが、温度45、55℃ではポリエチレンは結晶とアモルファスの混合状態となり、透明なフィルムの作製ができなかった。不透明な試料では紫外可視光の吸光度の変化の測定が困難であり、本測定原理でポリエチレン系を測定することはできないと判断した。そこで、ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを用いることにした。それ以外はおおむね計画通り進んでいる。すなわち、超臨界二酸化炭素雰囲気下におけるポリメタクリル酸メチル中のアントラキノンの拡散係数を温度45、55℃、圧力11~20MPaの条件で測定し、拡散係数の温度・圧力依存性に関する有用な知見を得た。また、3成分系に拡張した自由体積モデルにより、拡散係数の測定値を良好に相関できることが分かった。分子動力学シミュレーションを用いてポリエチレン+二酸化炭素+溶質(ブタン、シクロヘキサン、およびヘキサン)の3成分系の分子の軌跡および拡散係数を計算し、拡散挙動に関する有用な知見を得た。新たに提案した活量係数式を用いると、高い精度で相平衡を相関できることが示され、その式はグループ寄与法にも拡張可能であることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
超臨界二酸化炭素雰囲気下におけるポリメタクリル酸メチル中のアントラキノンの拡散係数を温度45、55℃、圧力11MPa以下で測定し、低い圧力下における拡散係数のデータの集積を試み、低い圧力下における拡散係数の温度依存性を明らかにする。さらに、溶質をアントラキノンからアントラキノン誘導体に変え、拡散係数が付加された官能基によってどのように変化するか測定する。また、自由体積モデルを用いて測定値を相関し、モデル中に含まれるパラメータとアントラキノン誘導体の官能基の関係を明らかにする。 分子動力学シミュレーションでは、ポリメタクリル酸メチル+二酸化炭素+シクロヘキサンの3成分系の分子の軌跡および拡散係数を計算し、ポリマーがポリエチレンからポリメタクリル酸メチルに変わったことによる二酸化炭素およびシクロヘキサン分子の軌跡および拡散係数の変化を考察する。さらに、ポリメタクリル酸メチル+二酸化炭素+アントラキノンの拡散係数を計算し、平成30年度に測定した拡散係数と比較、検討する。 新しい活量係数式を状態方程式に組み込み、超臨界二酸化炭素に対する溶質の溶解度を計算することを試みる。
|