これまでの研究において,フリーラジカル重合によってカチオン性高分子電解質poly(vinylbenzyl trimethylammoniumu chloride)(PVBTA)を表面修飾したシリカ粒子(粒径数百nm)を,代表的な粒子膜作製手法の一つである移流集積法に適用することで,粒子間に間隔のある粒子配列(非最密充填構造)を有するコロイド粒子膜をガラス基板上に作製することに成功している.本研究では,表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)法を用い,シリカ粒子に修飾するPVBTAの鎖長を制御することにより,非最密充填粒子膜の粒子配列の構造を制御することを目指している.さらに,得られた非最密充填コロイド粒子膜を焼成することで,PVBTAを除去し,シリカ粒子を一部溶融させてガラス基板と一体化させることで,数百nmのレンズが多数並んだメゾレンズアレイという新たな光学素子の作製も試みる.令和元年度(平成31年)に得られた成果は下記の通りである. 1.昨年度は,フリーラジカル重合で作製したPVBTA修飾シリカ粒子とガラス基板からなる非最密充填粒子膜の焼成によるメゾレンズアレイの作製を行っていたが,今年度はガラス基板の代わりに石英ガラス基板を用い,より高い温度での焼成を試みた.その結果,1150 ℃で1-3時間程度焼成することでメゾレンズアレイを作製することに成功した. 2.昨年度に引き続き,SI-ATRP法によるシリカ粒子へのPVBTAの修飾に取り組んだ.昨年度までの検討で最も修飾量が高かった触媒量および溶媒種の条件下で重合温度や時間を変えることで,PVBTA修飾量の向上を試みた.しかし,PVBTA鎖長を大きく向上させることはできなかった.また,得られたPVBTA修飾シリカ粒子を移流集積法に適用したところ,粒子同士が凝集した構造の粒子膜しか得ることはできなかった.
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