研究課題/領域番号 |
17K06899
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
三島 健司 福岡大学, 工学部, 教授 (40190623)
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研究分担者 |
シャーミン タンジナ 福岡大学, 工学部, 助教 (00794182)
井上 俊孝 西九州大学, 健康福祉学部, 教授 (20274615)
志村 英生 福岡大学, 医学部, 教授 (80178996)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超臨界流体 / 二酸化炭素 / 超音波 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
抗アレルギー剤探索系組織に利用可能な脱細胞化医療用材料の創製のために、臓器からの脱細胞と細胞外マトリックスの構造情報の読み取りと再構築を行う研究である。抗アレルギー剤は、個人による作用特性が大きく異なり、オーダメイド医療が望まれている。患者に負荷が大きい薬剤検査に代わる「生体特性を反映したモデル臓器」が望まれている。再生医療材料として、細胞増殖のスカフォールドには、細胞を除去した生体由来の細胞外マトリックスが適している。我々は、生体に害がなく溶媒特性の制御が容易である超臨界二酸化炭素と超音波を併用し、豚などの異種哺乳動物の臓器から脱細胞したバイオスカフォールド臓器の製造法を開発した。本課題研究では、抗アレルギー剤探索用の生体バイオスカフォールド臓器の量産を実現するために、そのCTスキャンデータを用いて、3Dプリンターによりバイオスカフォールド臓器の量産を臨床応用とあわせて検討した。抗アレルギー剤探索系組織を製作するために、マイクロX線CTで構造データを求めた豚の生体組織の脱細胞化臓器を用いて行った細胞増殖の知見をもとに、異種脱細胞化組織(細胞外マトリックス)を用いて、組織再生実験を行った。開発した細胞外マトリックスの構造補強のためにセルロースナノファイバーとの複合技術を利用して、高強度細胞外マトリックスでの細胞培養実験を行った。さらに、圧力負荷の少ない静脈血管に対する適応性について実験的に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗アレルギー剤探索系組織に利用可能な脱細胞化医療用材料の創製のために、超臨界二酸化炭素中で超音波照射によりラットならびに豚の皮膚ならびに組織から拒絶反応の原因となる細胞成分を除去し、異種脱細胞化臓器調整実験を行い、マイクロX線CT装置で構造データを求めた。超臨界二酸化炭素中での超音波や攪拌操作を応用し、「超音波併用型の超臨界二酸化炭素脱細胞化装置」を用いて、細胞浸透性の高いナノバブルを組織の細胞内に導入後、ラットならびに豚組織から、細胞成分を超音波照射により、超臨界二酸化炭素存在下で細胞成分を分離した。ナノバブルは超臨界二酸化炭素中でも、超音波照射による細胞内でキャビテーションを引き起こし、細胞組成の抽出効率を高める。その際、リン脂質やDNAなど細胞成分の超臨界二酸化炭素に対する溶解度が問題となるが、流通型の超臨界二酸化炭素溶解度測定装置、超臨界クロマトグラフィー装置、FT-IR, UV併用型を用い、溶解度測定装置を利用して、溶解度を測定した。処理した組織については、組織検査用薄片試料を常法により調製し、ヘマトキシリン・エオシン染色した後、光学顕微鏡にて脱細胞率を評価した。二酸化炭素抽出により脱細胞化を行った異種脱細胞化組織(細胞外マトリックス)を対象として、ストレスプローブを用いて組織のダメージを測定した。 さらに、脱細胞組織に有用物質を供給するための、高濃度リポソーム製造法を開発し、特許として出願した。さらに、細胞外マトリックスの構造補強のためにセルロースナノファイバーとの複合技術との融合を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
抗アレルギー剤探索系組織を製作するために、マイクロX線CTで構造データを求めた豚の生体組織の脱細胞化臓器を用いて行った細胞増殖の知見をもとに、異種脱細胞化組織(細胞外マトリックス)を用いて、組織再生実験を行う。今年度開発した細胞外マトリックスの構造補強のためにセルロースナノファイバーとの複合技術を利用して、高強度細胞外マトリックスでの細胞培養実験を行う。さらに、圧力負荷の少ない静脈血管に対する適応性について実験的に検討する。セルジャンクションの強度と十分な柔軟性が得られれば比較的圧力の高い動脈系の血管再生への適応性を検討する。他方、細胞培養に関して、市販の生体吸収性人工材料と調整した異種脱細胞化組織を用いて、心筋細胞の培養実験を行い、増殖組織の電気応答性を測定することで、培養素材の機能性を評価する。また、血管新生因子、細胞増殖因子、組織形成に係る遺伝子の影響を調べるために、細胞内から取り出した各化学種について、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)にて分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、当初計画した以上に研究が進展し、脱細胞組織に有用物質を供給するための、高濃度リポソーム製造法を開発し、特許として出願した。また、細胞浸透性の高いナノバブルを高濃度で含む高濃度ナノバブル水を得る方法を開発し、特許として出願した。さらに、細胞外マトリックスの構造補強のためにセルロースナノファイバーとの複合技術との融合を検討した。これらの新技術は、当初想定していなかった新規技術であり、本研究への適応性が高いため、当初の計画に加えてこの新技術を利用する研究も行うために次年度使用が生じた。使用計画として、当初の計画に加えて、生体に害がなく溶媒特性の制御が容易である超臨界二酸化炭素と超音波を併用し、豚などの異種哺乳動物の臓器から脱細胞したバイオスカフォールド臓器の製造法を抗アレルギー剤探索系組織に利用可能な脱細胞化医療用材料に適応する。
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