研究実績の概要 |
炭化ケイ素は耐熱性、耐久性に優れており、その特性を分離膜として利用するために様々なアプローチがなされてきた。しかしながら、実用上十分な水素透過率と水素選択透過性を両立することは困難であった。そこで、これらの問題を解決するため、Si-C結合を含む有機金属を出発原料して、対向拡散CVD法にてメソポーラス細孔内にSiC膜を合成することで水素透過率と水素選択透過性の両立を試みた。 SiC源としてシラシクロブタン(SCB)を使用して、φ3mm、細孔径150nmのα-アルミナ基材上にNi添加γ-アルミナを2層コートしたメソポーラス中間層内にSiC膜を合成した。膜合成には対向拡散CVD装置を用い、SCBのキャリアガスとしてアルゴン、反応ガスとして水素を使用した。 合成した膜の673Kにおける水素透過率は1.2X10-7 mol/m2・s・Pa、H2/CO2=2600、H2/N2=3080であった。ガス透過率の温度依存性についてはヘリウム、水素、二酸化炭素、アルゴン、窒素すべてのガスにおいて温度の増加とともに透過率が増加する活性拡散を示し、極めてシャープな細孔径分布を有していることが確認された。膜構造を解析するため、収束イオンビーム法により断面試料を作製し、SEM観察及びEDSによる線分析を行ったところ、膜はα―アルミナとγ―アルミナ+炭化ケイ素の二層で構成されており、有効膜厚さは0.8μm以下であると推測された。また、同じ膜をX線光電子分光にて結合状態の分析を行った。分離活性層はSiC, SiOxCy, SiO2で構成されていた。C/S比は1.05であり、原料のC/Si比よりも減少していた。C-C結合はCVD中に使用した水素により、分解している可能性があると考えられた。
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