研究課題/領域番号 |
17K06903
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
レンゴロ ウレット 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10304403)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エアロゾル / ナノ粒子 / 材料合成 / プロセス / 粉粒体操作 / 気中加熱 / 多成分系 / 結晶 |
研究実績の概要 |
本研究では、原料ナノ粒子混合体の懸濁液(コロイド)から気中に浮遊させた液滴群を高温場に導入するが、任意のナノ粒子の構造体を液滴中に形成させる。反応(熱分解)温度の低下を目指す省エネ型プロセスを開発することを目的としている。今年度の成果は以下の通りである。 (1)開発した静電噴霧法を用いて、シリカ(コロイド)ナノ粒子の構造体を形成しながら、気中にその構造体を分散させた。粒子構造体を目的の基板に集積し、主な解析を行った。シリカのゼータ電位は一般的に負であるが、企業と協力して、正のゼータ電位のサンプルも入手した。その結果、「正」または「負」帯電が可能な静電噴霧との多様な組み合わせが可能となった。基板に集積した粒子構造体に対して、紫外・可視・近赤外分光法を用いた。正・負、正・正、負・正、負・負と4つの組み合わせの構造体はそれぞれ異なる光学特性をもった。コロイド表面電荷と気中の液滴の帯電形態との間に粒子形態に強い相関を明らかにした。粒子の物理的と光学的特性を調整する静電噴霧法の能力が実証できた。 (2)コロイドナノ粒子を用いない溶液からの粒子構造体の合成も試みた。酸化亜鉛粒子構造体をモデルとした。角度45度で酢酸亜鉛溶液を平板に(数ミクロンの液滴)噴霧することによって合成した。集積した粒子構造体および熱流体数値シミュレーションからは、熱対流の影響と流体の不安定性の存在が明らかになった。粒子構造体のサイズと平板温度分布による動的状態との相関を解析したところ、噴霧ノズルと平板の間の距離を変化させると、予想以上の微細なナノスケールの粒子構造体が形成された。2ステップ加熱法(150℃で噴霧と450℃1時間)と比較して、1ステップ加熱法(450℃噴霧)を使用した方が、高い結晶性の構造体が形成できており、「省エネ」化が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般的なサンプル(シリカ)のゼータ電位は負(minus)であるが、企業と協力して、正(plus)のゼータ電位のサンプルも入手した。PlusまたはMinus帯電が可能な静電噴霧も開発できたことで、Plus/minus, plus/plus, minus/plus, minus/minusと4つの組み合わせ「帯電」での構造体の設計が可能となった。粒子の物理的(光学的)特性を操作できる静電噴霧法の能力が実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
気相法(気中分散法)を用い、原料ナノ粒子混合体の懸濁液から気中に浮遊させた液滴群(エアロゾル)を高温場に導入し、任意のナノ粒子の構造体を液滴中の自己組織化等により形成する。 多様な構造体を得るために、数nmから数100nmの幅広いサイズの原料粒子を組み合わせる。加熱後の多成分系材料に対して、粒子の性状の計測を行い、反応温度の低下を目指しながら最適な粒子径と構造体を解析する。またコロイドナノ粒子を用いない溶液からの粒子構造体の合成も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
協力的な企業が現れて、無償サンプルが入手できたことも理由となった。今年度は主に現有の設備を用いて研究成果を論文の形でまとめることができた。その結果に基づいて、次のステップに必要な設備の設計が考案できて、その追加すべき設備は次年度に購入することにした。
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