本研究では、原料である液相中のナノ粒子から気相中に浮遊させた液滴群を高温場に導入し、ナノ粒子構造体を形成させる。操作温度の低下を目指す省エネ型プロセス開発を目的としている。今年度では、主に以下の項目を検討した。 1)気中からの構造体が集積する表面について。 また集積における粒子の帯電の影響が少なく、より大きな(数μmオーダー)液滴径を発生する超音波噴霧装置を用いた。ナノ粒子構造体を解析するために、固体基板に構造体を集積させてから電子顕微鏡等を利用するが、基板の性状がどのように(集積する)構造体の形態等に影響を及ぼすかという点について検討が必要である。単一の金属基板上に異なる親水性レベルを有する領域を調製した。ナノ構造体における水の影響が重要であると考え、低圧型分析法(電子顕微鏡)と常圧型分析法(ラマン分光法、蛍光X線)を用いた。高い親水性の領域の表面においては、やや“Wet”な構造体の集積が多い。やや“Dry”な構造体の場合、低い親水性の領域に多く集積する。基板に到達(集積)する前の過程での浮遊構造体中の「含水率」が果たす役割が大きいことがわかった。 2)液相ナノ粒子の合成について 新たにナノ粒子を合成する液相プロセスを検討し、省資源を考慮した電気化学法に着目した。原料にもなる電極配置(Fe)を改善したところ、水中でのマグネタイトナノ粒子の製造に成功した。従来の電極配置と交互型(AM)の2種類の配置パターンを試みた。従来法に比べてAM型ではナノ粒子の生成速度が約30倍となった。得られた粒子サイズは、従来法が28~88 nmであるに対して、AM型では20~25 nmのシャープな範囲となり、高純度の粒子も合成できた。流体と電場の数値シミュレーションにより、電界が集中する位置がこの結果の鍵となったことを確認した。また操作条件を変えるだけでAM型では球形以外の粒子も合成できた。
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