研究課題/領域番号 |
17K06904
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
羽深 等 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (40323927)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シリコンエピタキシャル成長 / トリクロロシラン / ジクロロシラン / 三塩化ホウ素 / モノメチルシラン / 並列ラングミュア過程 |
研究実績の概要 |
本研究では、表面化学反応過程を加速する新たな方法を開発するため、以下の思想を検証する。 (1)反応思想:CVD装置を用い、珪素塩化物(SiHCl3, SiH2Cl2)に珪素水素化物など(SiHx,BCl3)を加えることにより、複数のラングミュア型表面過程を並列させる方法を試みる。(2)主反応検証:珪素薄膜を製膜し、製膜速度が珪素水素化物などの濃度と共に変化する挙動を把握する。一般にシリコン薄膜形成に用いられる珪素塩化物(トリクロロシラン、ジクロロシラン)を用いたシリコン製膜における製膜速度の飽和を超えることを目的とし、製膜時の中間体(*SiCl2)からClを取り除く機能を持つ物質として珪素水素化物など(SiHx, BCl3)の使用を試みる。珪素水素化物を反応器内で安全に生成し、それが中間体の分解に寄与することにより製膜速度が飽和値よりも増大することを明らかにし、製膜機構を保ちつつ製膜速度が従来の過程(単ラングミュア)時の理論的上限値を超えることを確認する。(3)副反応検証:クロロシランを用いた場合に下流側に堆積する可燃性副生成物が上記の反応過程により減少することを把握する。 平成29年度におけるトリクロロシランの結果に加え、平成30年度は、ジクロロシランにモノメチルシランを加えたことにより製膜速度が約2倍に上昇したこと、副生成物の堆積量が減少すること、を把握できた。今後は、本研究の方法による製膜においてホウ素を添加するために三塩化ホウ素を用いる。これらの工程において製膜が加速される様子と副生成物堆積量の関係を把握し、その機構を検討する。CVD 装置内に堆積したシリコンをHCl がエッチング(クリーニング時)する際の副生成物堆積について、並行して把握する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度においては、ジクロロシランにモノメチルシランを加えた場合のシリコン製膜速度の変化を調査した。 課題1(製膜速度計測):シリコン製膜用の珪素塩化物にジクロロシラン(SiH2Cl2)を用い、製膜加速用の珪素水素化物としてSiHx(x=1~4)を用いた。ジクロロシラン単独における製膜速度が毎分0.2μmである条件を把握し、同じ温度においてモノメチルシラン単独の製膜速度がジクロロシランによる製膜速度より著しく小さいことを把握した。次に、ジクロロシランにモノメチルシランを加えたところ、製膜速度は、実験条件における最大では毎分0.5μmとなり、成長速度が増大することを把握した。その際に、排出ガス中のクロロシラン濃度が、モノメチルシランガスの添加と共に減少することをガス分析により確認した。 課題2(水晶振動子による副生成物堆積量計測):平成30年度に続き、水晶振動子の振動数の変化の様子を確認し、ジクロロシランにおいてもトリクロロシラン使用時と同様であることを確認した。これを主に製膜時に計測し、副生成物の堆積速度と挙動を観察した。以上の方法に基づき、一定時間当たりの副生成物堆積量の変化を把握したところ、ジクロロシランに加えるモノメチルシランガスの濃度を増大させることにより、水晶振動子表面に体積する副生成物(塩化珪素)の量が減少する傾向が把握された。上記の排出ガス分析の結果にこれを加えることにより、珪素塩化物と珪素水素化物の間の化学反応による珪素塩化物消費効率向上が証明された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究を進めて来たトリクロロシラン、ジクロロシランとモノメチルシランによるシリコン製膜に、ドーピングが可能であることを実証するため、珪素塩化物と三塩化ホウ素を用いたシリコン製膜を行う。三塩化ホウ素は、従来用いられているジボランに比較して大幅に安全な物質であることが、ここに採用する理由である。三塩化ホウ素自体の挙動を詳しく調べるため、シリコン表面における三塩化ホウ素単独の挙動を把握する。特に、三塩化ホウ素はプラズマプロセスにおけるエッチングガスとしても採用されている物質であることから、製膜とエッチングの両方の挙動を示す可能性があるので、これに注目して幅広い条件における挙動を調査する。その後に、トリクロロシラン或はジクロロシランに三塩化ホウ素を加えて、ドーピングできることを示し、更にモノメチルシランを加えて高速化を検証する。 その他に、CVD装置内に堆積したシリコンをHClがエッチング(クリーニング時)する場合には、Si+3HCl→SiHCl3↑+H2↑となることが知られているが、SiHCl3は高温の気相中においてSiCl2を形成し易くなり、副生成物堆積を生じ易い。そこで、上記の製膜に並行してクリーニングの温度による副生成物堆積速度の変化も並行して把握する。
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