研究課題/領域番号 |
17K06908
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
興津 健二 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60295095)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超音波 / バブル / 界面 / 高温 / 無機塩 / 熱分解 / ラジカル |
研究実績の概要 |
これまでの研究で塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムの添加が水中で生成される超音波キャビテーションに及ぼす影響について検討したが、陰イオンとOHラジカルの反応の進行など不明な点が多かった。そこで本研究では、ヨウ化カリウムが超音波キャビテーションに及ぼす影響について調べた。さらに、これまで水の分解から生成される過酸化水素の量を超音波キャビテーションのもたらす化学作用量として解析されていたが、本研究では、過酸化水素と同時に生成される水素の解析についても新たに検討した。その結果、添加されるヨウ化カリウムの濃度が高くなるほど、キャビテーションバブルの化学作用量(過酸化水素生成量と水素生成量)が減少する傾向が見られた。さらに、アルゴン溶解度と水素生成量の間に強い相関が見られたが、アルゴン溶解度と過酸化水素生成量の間では前者よりも相関が弱いことが確認された。ヨウ化カリウムの添加によって溶液中の溶存ガス量の減少、ヨウ化物イオンとOHラジカルの反応、それによる溶液pHの変化、バブル内温度の低下など様々な現象が同時に変化していることが明らかとなった。さらに空気雰囲気下の水中高温高圧バブルにて硝酸イオン、亜硝酸イオン、過酸化水素が生成されることがこれまでわかっているので、本研究では、各種実験パラメータがこれらの生成量と物質収支に与える影響について詳細に解析した。その結果、亜硝酸イオンと硝酸イオンおよび過酸化水素はそれぞれの生成に対して、互いに影響を及ぼす場合があることがわかった。また、超音波照射されている溶液量とこれらの生成量の関係を調べてみると、溶液量が少ないときにこれらの生成量が少なくっている場合があった。さらに、超音波出力を強くしても、実験条件によってキャビテーション効率が高くなる場合と低くなる場合の両方が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無機塩が水中で生成される超音波キャビテーションバブル内の温度とキャビテーションバブルがもたらす化学作用に与える影響について定量的に明らかにすることができたため。さらに、空気雰囲気下で生成される超音波キャビテーションバブルの化学作用(過酸化水素、硝酸イオン、亜硝酸イオンの生成とこれらの生成量の因果関係)を定量的に明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
バブル内やバブル界面での化学作用の特徴やバブルのもたらす物理化学作用をさらに詳細に明らかにするために、有機酸やアルコール、ポリマーなどの各種有機物の分解や、各種ガスが超音波キャビテーションバブルに与える影響について検討する予定である。
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