研究課題/領域番号 |
17K06912
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
一國 伸之 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40261937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノクラスター / 酸化コバルト触媒 / 酸化ニッケル触媒 / コロイド / XAFS |
研究実績の概要 |
本研究は,鉄,コバルト,ニッケルなどの卑金属元素をナノサイズ化し,シリカ,活性炭などの高比表面積を有する担体上に担持後に酸化型へと転換することで,酸化物ナノクラスター触媒とし,これを液相でのアルコール選択酸化反応に応用するものである。本年度はこれらうち,主にコバルトやニッケルのナノクラスター触媒の調製とキャラクタリゼーション,ならびに1-フェニルエタノールやベンジルアルコール酸化反応へ応用した。 1. アルコレート保護基を用いたコバルトのコロイドを利用し,シリカ上に酸化コバルトナノクラスターを構築したところ,アルコレートのアルキル炭素鎖長により粒子サイズが制御できることをX線吸収スペクトル(XAFS)から明らかにした。この触媒上でのベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの活性は粒子サイズには対応しなかった。XAFSデータを多重散乱理論により解析したところ,ナノクラスター表面に存在する酸素欠損サイト量と活性が対応していることがわかり,表面酸素の欠損が反応のキー構造であると結論づけられた。 2. ニッケルコロイドを活性炭に担持し,室温で酸化,洗浄を施したところ,洗浄溶媒により形成するナノクラスターの化学状態が異なり,ニッケル水酸化物とニッケル酸化物の割合を制御できることが見出された。またこのとき,1-フェニルエタノールからアセトフェノンへの酸化反応活性は,ナノクラスター中のニッケル酸化物割合によって変化することをXAFS解析から明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究予定は酸化ニッケルナノクラスターの担体への構築と構造解析ならびに触媒反応であった。担体上へのニッケルのナノクラスターの固定と酸化を行い,構築された酸化ニッケルナノクラスターの化学種やサイズをX線吸収スペクトル(XAFS)を用いて明らかにすることに成功している。また,化学種の制御も行えた点は評価しうる。さらに,次年度に取り組み始める予定であった,他の卑金属であるコバルトを活用し,酸化コバルトナノクラスターをシリカ上に構築し,そのアルコール酸化反応の活性点が表面の酸素欠損サイトにあることをXAFSスペクトルと理論的検討から明らかにできたことは当初よりも進展しているところである。 一方で,酸化ニッケルナノクラスターと担体間の距離制御による担体界面構造の反応への影響については予定のように進展していない。ただ,担体の種類を変えることで担体界面に構築される構造の影響を検討することはできており,違う形でのアプローチであるが界面構造が与える影響についてある程度の目標達成はできたと判断する。 以上から,全体として,ほぼ順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本申請課題はニッケルに限らず,鉄,コバルトなどの卑金属元素の酸化型ナノクラスターを構築し,界面構造制御とあわせて,担体界面アシスト型触媒作用の起源解明と応用を広げることである。そこで,鉄,コバルトのナノクラスター設計に精力的に取り組むとともに,キャラタクリゼーションにおいてXAFSの理論的解釈による精緻な構造解析にも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初は,ベルギーで開催の国際会議に参加する学生の旅費支出を計画していたが,都合上参加予定者が減ったこと,また物品費が当初計画よりも少なくて済んだこと,ならびに,立命館大学でのXAFS測定を実施せずに研究を遂行できたために,それらの費用が少なくて済んだ。 (使用計画)上記理由により,直接経費577,002円の次年度使用額が生じた。これ物品費,旅費として含め,当初予定通りの使用計画とする。特に,学生を同伴しての国際会議や,国内学会参加などを予定している。
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