研究課題/領域番号 |
17K06920
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大室 有紀 (松山有紀) 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30571088)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発光酵素 / タンパク質間相互作用検出 / 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
1) ホタルの発光反応を利用したタンパク質間相互作用検出系FlimPIAのメカニズムについて、ルイジアナ州立大学との共同研究で、数理モデルを用いた解析を行った。その解析中に、ホタルの発光反応は、従来使用されてきた定常状態を仮定したミカエルス・メンテン式からは正確に解析できず、反応全体における発光量・代謝回転数 (kcat)・吸着速度定数 (kon)・脱着速度定数(koff)を利用して数理モデルを作成することにより、より正確に解析ができることを見出した。本研究成果は、長年多くの研究がなされてきたホタルの発光反応についての研究に一石を投じるだけでなく、ホタルの発光酵素を用いたバイオセンサー・イメージング等のバイオテクノロジー分野の発展に寄与するものである。 2) 発光酵素NanoLucを利用したタンパク質間相互作用検出系NanoLuc3分子テクノロジーのプローブLcBiTをより親水性にすることを試みた。親水性にすることによって、測定の安定性が高まるとともに、膜タンパク質の相互作用検出が可能となる。そのために、本研究では、LcBiTを親水性にした変異体を含むライブラリーを作製し、リポソーム存在下で、膜貫通ドメインと融合させたタンパク質を無細胞系タンパク質翻訳システムを利用して発現させることで、スクリーニングを行なった。その結果、親水性にしたことによって、膜タンパク質の相互作用に利用できる配列を得た。膜タンパク質は薬剤の標的箇所であることから、膜タンパク質に利用できるNanoLuc3分子テクノロジーが開発されたことは、新薬開発に寄与する成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 初年度にFlimPIAにおける細胞内タンパク質間検出が難しいことが示され、その原因究明のために、FlimPIAのメカニズムについて、ルイジアナ州立大学との共同研究で、数理モデルを用いた解析を行った。その結果、長年、多くの研究者が探求してきたホタルの発光反応について、従来使用されてきた定常状態を仮定したミカエルス・メンテン式からは正確に解析できないことが明らかになり、さらにより正確に解析ができる新方法を確立するに至った。本成果は、本研究計画を立てた当初には全く予想できなかったものであるが、ホタルの発光反応についての研究に大きな一石を投じるものとなった。 2) タンパク質間相互作用検出系NanoLuc3分子テクノロジーは昨年度開発した新方法であるが、今年度、プローブの親水性化することで、より安定な測定とともに、膜タンパク質間相互作用検出系に利用できるプローブの開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1) ホタルの発光反応の解析法について、今後、ルイジアナ州立大学だけでなく、発光反応の量子収率の計算を御専門とする産業技術総合研究所の研究者とも共同研究を行うことで、より正確性を高める。 2) 複数のタンパク質間相互作用を細胞内で検出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
複数の学会の演題登録期限までにデータが出揃わなかったため、研究成果発表のための出張が少なくなり、次年度使用額が生じました。 使用計画として、2019年3月より、研究を加速させるために技術補佐員を雇用したので、その雇用費に充てます。
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