研究課題/領域番号 |
17K06925
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏和 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80462696)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジオバチラス / スクリーニング / 好熱菌 / 耐熱化酵素 / タグ / ガラクトシダーゼ / 電気穿孔法 / ライブラリー |
研究実績の概要 |
平成30年度までの研究成果から「好熱菌中で熱変性した酵素は,不溶性画分に蓄積することなく,速やかに分解される」ことを発見した。見方を変えれば,Geobacillus属細菌を高温培養した際にも蓄積される酵素は耐熱性ということになる。この現象を利用すれば,工程①対象酵素遺伝子へのランダム変異導入,工程②好熱菌を宿主としたライブラリー構築,工程③高温培養による好熱菌コロニーの形成,および工程④対象酵素を蓄積している好熱菌コロニーの検出,を通じて,耐熱化酵素は極めてシンプルに獲得できるはずである。
工程②を解決するために,本年度では好熱菌Geobacillus thermodenitrificans K1041にプラスミドを導入するための電気穿孔法を検討した。様々な条件を検討することで,最終的に10^6 cfu/ugの効率でプラスミドを導入する手法を確立した。さらに本好熱菌の生物学的諸性質も解析し,その利用における堅実な基盤を構築した。また酵素を生産するためのベクターも開発した。
工程④の実践化のために,変性タンパク質検出法の確立を目指した。そのために高温で利用可能な酵素タグを研究した。大きなレポータータンパク質は,対象酵素の物理化学的性質(耐熱性など)に影響するため,タグは小さいことが好ましい。そこで好熱菌由来のβ-ガラクトシダーゼ(LacZ)の特性評価を行い,そのN-末端領域(α断片)が小型タグとして機能することを見出した。本タグは,β-ガラクトシダーゼの本体(ω断片)と会合することで,β-ガラクトシダーゼ活性を回復した。耐熱性があることも確認した。このタグで標識した対象酵素を好熱菌中で産生させ,細胞表層に提示させれば,ω断片と発色基質(X-gal)で,酵素産生量を定量できると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耐熱化酵素をスクリーニングするための新たな原理を発見し,それを当該課題の達成につなげる堅実な技術基盤を構築できた。他多くの関連する知見も得られたことから,研究進捗は順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
プラスミド導入効率の更なる向上を目的とし,K1041の制限修飾系遺伝子を破壊する。並行して,変性タンパク質検出法の開発を進める。そのためにモデル酵素にLacZ小型タグを連結し,それをK1041株に導入する。産生されるモデル酵素が実際に検出できるか,さらには酵素の耐熱性によってシグナル強度が変化するかを検証する。有効性が確認できた場合には,任意タンパク質の遺伝子ライブラリーを,K1041株を宿主に構築し,耐熱化変異体が実際に取得できるかを検証する。また生育差によって耐熱化酵素を選別する可能性を検証する。モデル酵素遺伝子のライブラリーをK1041を宿主に構築し,継代培養後,優勢化したクローンが耐熱化酵素をもっているかを検証する。
なお研究過程では,好熱菌中で転位因子が頻繁に転位することを見出した。好熱菌内で不本意な変異が入ることを防ぐことは,本課題の達成に重要と考え,その転位誘発原理に関しても研究する。
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