研究課題
グリシンオキシダーゼ(GlyOX)は, グリシンの酸化的脱アミノ化を触媒する酵素である。これまでに数種の微生物由来酵素が報告されているが,ほぼ全てFADを補酵素としており,グリシン以外にサルコシンや D-アミノ酸等とも反応する低基質特異性の酵素がほとんどである。 最近我々はL-リシン ε-オキシダーゼ生産菌の海洋性細菌Marinimonas mediterraneaに従来型のFADではなくキノン補酵素を有する新規なGlyOXの活性を見いだした。 本酵素の構造と機能を明らかにし酵素センサー等として産業利用するため,今年度は海洋細菌M. mediterraneaから本酵素の精製と諸性質の検討を行った。まず海洋細菌M. mediterraneaをマリンブロースを用いて培養を行い, 培養後, 培養液上清を陰イオン交換樹脂DEAE-Toyopearl カラムクロマトグラフィー及び ゲル濾過Sephacryl S-300HRに供して精製を行った。この酵素評品を用いて, 種々の性質検討を行った。最適温度は40℃, 最適pHは5.0だった。基質特異性を検討したところはグリシン以外の天然アミノ酸には全く反応せず厳格な基質特異性を有する酵素であることが分かった。これまで報告のある他の微生物由来GlyOXが良い基質とするするサルコシンやN-エチルグリシン,D-アミノ酸にも全く作用せず。これまでで一番厳格な基質特異性を示し,グリシンセンサーとして極めて有効であることが分かった。唯一グリシンエチルエステルに若干反応し,17.3%の相対活性が確認された。
2: おおむね順調に進展している
海洋性細菌Marinimonas mediterranea由来のグリシンオキシダーゼの精製を行い,性質検討することができた。M. mediterranea由来のグリシンオキシダーゼは, グリシン以外の天然アミノ酸には全く反応せず厳格な基質特異性を有する酵素であることが分かった。これまで報告のある他の微生物由来GlyOXが良い基質とするするサルコシンやN-エチルグリシン,D-アミノ酸にも全く作用せず。これまでで一番厳格な基質特異性を示し,グリシンセンサーとして極めて有効であることが分かった。
今年度は大腸菌で異種発現させることでGlyOXの精製系を確立することをめざす。GlyOXの遺伝子は,goxAおよびgoxB遺伝子で構成されているため2つのマルチクローニングサイトをもつpRSFDuetにgoxAとgoxBをつなぎ込み, pRSFDuet-goxA-goxBを構築する。またE. coli Rosetta(DE3)に形質転換しpLysS/Duet-goxA-goxBの発現系を確立する。
(理由)当初の予想より,試薬代が必要とならなかった。(使用計画)これまでの実験結果を元に,更なる研究を行う上での必要な試薬の購入に充当する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Acta. Cryst.
巻: F73 ページ: 152-158
Protein Science
巻: 26 ページ: 1224-1230