研究課題
海洋性細菌Marinomonas mediterranea 由来グリシンオキシダーゼ(以下GlyOX)はグリシンに厳格な基質特異性を示し, バイオセンサー等への応用が期待される。また本酵素は分子内の結合により生じるシステイントリプトフィルキノン(CTQ)という特徴的な構造を有するが, その生成機構はまだ明らかにされていない。立体構造解析やCTQ形成機構の解明には大量の酵素が必要であるが, 本菌はGlyOX生産量が少ないため, 大腸菌でのGlyOX発現系の構築と精製系の確立を目的として実験を行った。GlyOX遺伝子は本体となるgoxA とCTQ形成に関与するとされるgoxB の両遺伝子から構成されている。そのため2つの遺伝子を2つのマルチクローニングサイトを持つpRSFDuet-1に組み込んだpRSFD goxA-goxB を構築し, E. coli Rosetta (DE3) pLysS へ導入し, GlyOX発現を試みた。GlyOX活性はグリシンの酸化により生じる過酸化水素を4-アミノアンチピリン法で定量することで測定した。精製は無細胞抽出液を80%硫安沈殿で回収後, メタルアフィニティーカラムTALONを用いて行った。精製の確認はSDS-PAGEで行った。TALONカラムにより1段階で精製純度を効率的に上昇させることができた。精製酵素の比活性は56.8 U/mgであった。基質特異性を検討した結果, ネイティブ酵素と同様にグリシンに厳格な特異性を示し,構造類似体ではエチルグリシンに若干反応したが, それ以外は反応しなかった。本研究により精製法をほぼ確立できたので, 今後は詳細な性質検討を行うとともにX線結晶構造解析により立体構造を決定し,GlyOX,GoxB両蛋白質の相互作用によるCTQ形成機構を解明する予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年は生産菌である海洋性細菌Marinimonas mediterraneaからグリシンオキシダーゼの精製を行い,性質検討をした。今年度は,立体構造解析やCTQ形成機構の解明に向けて大腸菌でのGlyOX発現系の構築と精製系の確立を目的として実験を行った。GlyOX遺伝子は本体となるgoxA とCTQ形成に関与するとされるgoxB の両遺伝子から構成されている。そのため2つの遺伝子を2つのマルチクローニングサイトを持つpRSFDuet-1に組み込んだpRSFD goxA-goxB を構築し, E. coli Rosetta (DE3) pLysS へ導入し, GlyOXの発現を試み,成功した。組換え酵素の精製系も確立できた。
今年度はL-リシン ε-オキシダーゼについて大腸菌での異種発現と精製系の確立をめざす。GlyOXについては,精製系をほぼ確立できたので, 今後は詳細な性質検討を行うとともにX線結晶構造解析により立体構造を決定し,GlyOX,GoxB両蛋白質の相互作用によるCTQ形成機構の解明を試みる。また両酵素を用いて,酵素センサーや定量キットの作成を行う。
(理由)当初の予想より,試薬代が必要とならなかった。(使用計画)これまでの実験結果を元に,更なる研究を行う上での必要な試薬の購入に充当する。
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Biochim. Biophys. Acta.
巻: 1867 ページ: 194-201
10.1016