研究課題
グリシンオキシダーゼ(GlyOX)は,海洋性細菌 Marinomonas mediterranea が生産する酵素である. M. mediterraneaはGlyOXやL-リシン-ε-オキシダーゼ(ε-LysOX)を生産し, 両酵素はバイオフィルム形成に関与している. ε-LysOXは当研究室でX線結晶構造解析が行われ, 補酵素としてビルトイン型補酵素のシステイントリプトフィルキノン(CTQ)を持つことが明らかとなり,その後の遺伝子解析によりGlyOXもCTQ依存性であることが示唆された.今年度はGlyOXのX線結晶構造解析のための大腸菌組換え発現系と精製系の確立および組換え酵素の性質検討, 応用利用の検討を目的として実験を行った. 新規の金属アフィニティーカラムを用いることにより陰イオン交換カラムと2回のカラムで効率的な精製を行うことができた.精製酵素を用いた性質検討の結果,組換えGlyOXは反応最適温度が30℃, 反応最適pHは5.0, 熱安定性は50℃, pH安定性は5-9の間で残存活性90%以上であった.グリシンに対して厳格な基質特異性を示し,その他L-アミノ酸やD-アミノ酸, Bacillus subtilis由来のGlyOXでは高い活性を示すサルコシンなどのグリシン構造類似体に対して活性を示さなかった.これは本酵素がグリシンのアミノ基を特異的に認識していることを示している. また食品中のグリシンを定量することを目的とした簡易測定キットへの応用実験で高精度にグリシンの定量を行うことができた. 珪藻土を用いて固定化したGlyOXが酵素センサーとして利用可能であることも明らかとなっている. 以上のことから本酵素は基質としてグリシンを特異的に認識し酸化的脱アミノ化反応を触媒することができ, グリシンの酵素センサーとして極めて有用であることが示された.
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