研究実績の概要 |
本年度はイタコン酸を生成するシンプル酵素触媒について、前年度に構築した酵素を融合させて発現させた株の解析を行った。 融合酵素として、2種のリンカー(Flexible, Rigid)を用い、それぞれの構成単位を1回から3回繰り返したものを変換酵素であるアコニターゼとcis-アコニット酸デカルボキシラーゼ(CAD)の間に挿入して配列を連結し、発現プラスミドを構築した。これらを発現させた低温菌株を構築しシンプル酵素触媒において変換反応を行ったところ、初速度において差が見られる傾向があり、Flexibleリンカーの方がRigidリンカーよりも高いことが示された。しかし、高い基質濃度の場合においては最終的な変換効率の差が顕著に見られないことが考えられた。 融合酵素による効果として、酵素分子の高分子化による酵素の漏出防止が考えられる。各酵素を単独で発現させた低温菌細胞を用いて変換反応を行った際に繰り返して反応を行うことができなかった。細胞外に酵素が漏出した可能性を考え、反応液上清に2種の酵素の基質であるクエン酸とcis-アコニット酸をそれぞれ添加して反応させたところ、cis-アコニット酸を基質とした反応においてイタコン酸の生成が見られたことからCADの細胞外漏出が示唆された。そこで、融合酵素を発現させた細胞を用いて反応したところ、2種のリンカーをそれぞれ2回繰り返して連結した融合酵素発現株において2回目の反応でも活性が保持されていた。しかし、3回目以上の繰り返し反応では低下があることから漏出抑制は部分的であったため、今後、細胞構造自体の強化が求められる。
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