研究実績の概要 |
本申請ではアスパラギン結合型糖鎖(N型糖鎖)の構造改変によるバイオ医薬品の機能化を目的とした開発プラットフォームを構築するために、近年注目を浴びているコアフコース構造を合成するFUT8の変異導入による反応高効率化及び変異体酵素の恒常的発現細胞を樹立することによるコアフコシル化糖タンパク質高発現系を作製していく。平成29年度は、FUT8の反応高効率化を目指して翻訳後修飾改変FUT8変異体の作製についてN型糖鎖導入変異体の作製を中心に行った。カイコFUT8の糖鎖付加部位を参照にヒトFUT8のAsp-186, Glu-347, Glu-348に変異導入を行い糖鎖付加変異体を作製した。また、SNPデータベースに登録のあったAsn-213に糖鎖付加部位が導入されるAsn215Ser変異体も併せて作製した。一般的にタンパク質発現によく利用されるCOS-1, HEK293, CHO, HepG2, Sf21細胞に各変異体を発現させFUT8酵素活性を測定したところ、Asp-186, Glu-347, Glu-348に糖鎖付加部位を導入した変異体では酵素活性の上昇が見られたがSNP変異体であるAsn215Ser変異体では酵素活性の低下が見られた。 糖鎖付加部位を複数導入した変異体では、更に活性が上昇する傾向にあることも観察された。これらの結果から、ヒトFUT8のAsp-186, Glu-347, Glu-348への変異導入による糖鎖付加は活性上昇に効果的であることが示された。更に興味深いことにGlu-347の糖鎖付加変異体ではCOS-1細胞で発現させた場合に糖鎖付加が約50%しかなされなかったことが明らかになり、糖鎖改変において宿主やタンパク質の部位特異的に糖鎖の付加効率が変化することが示唆された。
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