研究課題
コアフコシル化糖タンパク質高発現系の構築を目指し、前年度までにヒトα1,6-フコース転移酵素(FUT8)のN型糖鎖付加変異導入による活性上昇について調べて来た。本年度は、FUT8の細胞内動態や活性調節を理解するために、FUT8の高次構造形成やそれに関わるα-helical ドメイン(Coiled-Coil様ドメイン)やSH3ドメインの役割について研究を行った。初めに、カイコFUT8のS-S結合を介したホモ2量体形成に関わるシステイン残基をヒトFUT8に導入したところ、カイコ酵素と同様のホモ2量体を形成することが明らかになった。続けて我々が以前に明らかにしたヒトFUT8の構造データを用いて分子モデリングを行ったところ、ヒトFUT8がN末端側のα-helical ドメインを介して2量体を形成すること、C末端側のSH3ドメインがパートナー分子のα-helical ドメインに隣接して位置していることが予測された。これらの予測を基に、α-helical ドメインの欠損変異体やSH3ドメインの点変異体を作製したところFUT8活性が消失もしくは著しく減少することが示された。あわせて、S-S結合導入変異体による架橋実験によりα-helical ドメインとSH3ドメインの空間配置が細胞内においても分子モデリングの結果と一致することが示された。得られた結果より、ヒトFUT8が活性体として働くにはホモ2量体形成が必要であり、その形成には触媒ドメインに付随したα-helical ドメインやSH3ドメインが重要な役割を担っていることが示唆された。今年度の研究成果は、より高活性なFUT8変異体の作製を考える際にα-helical ドメインやSH3ドメインが標的になる可能性を示しており、N型糖鎖付加変異体と合わせることでより高効率でコアフコース付加が可能となるFUT8変異体の作製が期待できる。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1864 ページ: 129596~129596
10.1016/j.bbagen.2020.129596