|
これまでに、分子量および疎水性の異なる様々な難水溶性物質と消化ペプチドとの複合体の水溶性・水分散性について調査し、難水溶性物質の分子量と疎水性が複合体の分散性を決定づける主要な因子であることを見出した。
R1年度は、消化ペプチドと複合化した難水溶性薬物の経口吸収性評価として、小腸上皮細胞モデルとして知られるCaco-2細胞の単層膜を用いた透過試験を行った。初めに、昨年度も実施したインドメタシン複合体の透過試験を行った。単層膜形成後に細胞の上層と下層をHBSS（ハンクス液）で満たして上層側にインドメタシン複合体またはブランク試料を加えて透過試験を行ったところ、複合体ではブランク試料より薬物透過量が約8倍増加した。一方、同様の透過試験を模擬消化処理を施してから行ったところ、複合体とブランクの差が無くなった。インドメタシンはイオン解離性であるため、消化処理のpHでイオン化し溶解するため差が無くなったと考えられる。さらに消化ペプチドとケルセチンとの複合体についても同様にCaco-2細胞を用いた透過試験を行ったところ、ケルセチンの場合は模擬消化処理を行ってもブランク試料に対して2.6倍ケルセチンの膜透過量が増加した。この結果より、消化ペプチドとの複合化によって難水溶性物質の経口吸収性を向上できる可能性が示された。
他方、可溶化技術のサプリメント・加工食品への展開として、柑橘類から抽出したβクリプトキサンチン、ならびにトマトから抽出したカロテン類のカゼインとの複合化による高分散化について検討した。βクリプトキサンチンおよびリコピン等のカロテン類の分散性が向上し、細胞膜透過性の向上について再現性を確認した。消化ペプチドおよびタンパク質との複合化は経口吸収性を高めたい多様な難水溶性物質の高分散化技術として利用できると期待される。
|
