研究課題
配列解析より設計した、ラマ型人工設計VHHであるFcAb1およびFcAb2は、ラマ型VHHと比較し20%程度の新規性を持っていた。しかし、FcAb1およびFcAb2は、沈殿しやすい、抗原認識部位を導入すると生産性が下がるなどの欠点を持っていた。この原因を探るため、ゲルろ過等やNative-pageで分子量の分布を見ると、高次構造がヘテロであった。ペリプラズムに発現させたり、Gro-EL/ES、DnaK-DnaJなどの分子シャペロンによっては、この性質や生産性はあまり改善しなかった。そこで、人工設計に用いるパラメーターの改良、設計過程の可視により設計に用いる配列を調整する事で、設計精度の向上を図った。また、設計に用いる配列データを人由来とすることで、配列をヒト化したVHHを、改良したプログラムで設計したところ、生産量が1.5~2倍に向上、TNF-αの抗原認識部位を移植したところ、移植元の抗体と同等の結合能を、ITC解析では示した。よって、配列をヒト化した上で、ラマ型VHHと同様に単鎖のみで抗原に結合する人工抗体の設計に成功したといえる。ただし、その1次配列は、米ベンチャー企業が特許出願済の配列と酷似していた。高等生物の抗体は非常に多くの企業や研究者が研究し、多数の特許が存在するため、特に配列をヒト化した場合、1次配列自体の新規性を担保するのは難しいが、ラクダVHHのような性質をもつ単鎖抗体をヒトの配列で設計できたことには意味があると考える。また、抗体を検出する時に利用するアルカリフォスファターゼ等、検出用の酵素の高機能化を目的として、人工設計酵素の設計を行ない、一部の人工酵素で活性が有る形で高発現できることを確認した。H30年度は、改良されたプログラムを用いた論文を含めると、8報の論文と1つの特許出願、静岡テックプランコンテストで優勝する等の業績を果たした。
2: おおむね順調に進展している
H29年に前倒しした研究を含め、研究計画は概ね順調に進んでいる。改良されたプログラムにより再設計およびヒト化したFcAbは、プロトタイプに比べると、生産性および物性が大きく向上していた。ペリプラズムへの発現や分子シャペロンの効果がなかったのは予期していなかったが、余分なシグナル等をつけずに、細胞内で高発現するVHHは、融合タンパク質を調整する目的ではむしろ都合がよいと考えいる。
抗体を検出する際に用いられている酵素の設計・改良に引き続き挑戦する。大腸菌で高生産で高活性であり、抗体との融合蛋白質を菌体内で生合成することをめざす。また、scFvを利用している研究者は未だに多いため、scFvを配列解析により設計もしくは改良可能か挑戦する。
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