研究実績の概要 |
触媒として用いる大腸菌への機能集約からバイオ燃料電池の出力改善に取り組んできた。2017年度では、5重欠損株を構築しこれまでに開発してきた小型2槽型燃料電池での18時間の測定において、出力は野生株の1.5倍に相当する0.24 mW/h・mLを達成した。 2018年度は、5重欠損株を用いて負極溶液の組成について検討した結果、炭酸水素ナトリウム濃度を5%にすると、クーロン効率は10.4%まで低下したが、出力は0.27 mW/h・mLまで上昇することが分かった。また、解糖系からTCAサイクルに入る経路を新たな導入するためにppc遺伝子の過剰発現を重ねた結果、出力は野生株よりわずかに低い程度まで低下したが、クーロン効率が52.1%まで上昇し、燃費の大幅な改善に役立つことが分かった。2019年度は、これらの結果を受けて5重欠損株をベースにさらに重ねる変異候補を検討した。電子やメディエーターの移動に関わる内膜及び外膜に注目し、それらに関わる遺伝子の改変が出力やクーロン効率に与える影響を調べた。例えば、細胞膜キノン量の低下につながる変異、具体的には、ΔubiCで、平均出力およびクーロン効率の上昇が見られ、ユビキノン合成の初期段階の阻害によって、キノン系のメディエーターへ流れる電子量が増加した可能性が考えられた。外膜については、メディエーターの外膜透過性が変化することを期待し、外膜タンパク欠損株を用いて出力評価を行った。その結果、疎水性小分子の輸送に関わるOmpWの欠損株(ΔompW)では平均出力がWTの1.2倍に向上した。これら以外にも候補変異を選出し、最終的にompW, ubiC, cyoA, fnr, nuoAの欠損を重ね、6重欠損株を構築した。しかし、それらの株では出力向上は見られなかった。これらとは別に律速となる箇所が存在していると考えられた。
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