研究課題/領域番号 |
17K06942
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 光司 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70376507)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小型タービン / テスラタービン / マイクロ流体機械 / 境界層 |
研究実績の概要 |
本年度は,翼列複合型テスラタービンを対象に,設計指針を得るための数値流体解析を実施した.なお,テスラタービンの基本形状(ロータ直径など)は,次年度以降実施予定のテスラタービン試作機の設計諸元を使用している. まず設計コンセプトより,翼列の追加によるディスク領域の流れ場の変化を最小限に留めるものとし,その条件の下にロータ効率が最大となる翼列設計を得ることを目指した.事前に実施したオリジナル形状のテスラタービンの流れ場から,翼列を付加する領域においては,流体の静圧はほぼ出口静圧に等しいことから,翼型設計としては衝動タービンの翼形状が適しているものと考え,その翼形状を参考にすることにした.そのうえで,流れの転向角,コード長,翼枚数を設計変数として,様々な形状の翼列を対象に,CFD解析を実施した. まず転向角の影響についてであるが,前述の設計指針から,前縁の角度は流れの向きに平行に固定し,後縁の角度をパラメタとした比較を行った.その結果,流入と流出が対称になるように転向角を定めるのが良いという結論を得た.次に翼枚数の影響について解析したところ,翼枚数が多いほどロータ効率は良くなったものの,30枚以上とした場合,その改善は極めて小さいことが分かった.最後にコード長の影響について解析したところ,これについてもコード長が長いほどロータ効率が改善している様子が見られたものの,コード長が7.5mm以上の場合は,ほとんど改善がみられないことが判明した. 以上のことから,次年度以降実施する予定の,翼列複合型テスラタービン試作機の設計指針として,1)翼型形状について,前縁は流れの向きに合わせ,後縁は前縁に対して対称形状とする,2)翼枚数については30枚程度,3)翼コード長については,およそ5~7.5mm程度,といった方針を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,翼列複合型テスラタービンのロータ及び翼形状の設計指針を得るために,翼形状に関する設計パラメタがロータ効率に与える影響を,CFD解析によって議論し,次年度に予定している試作機の設計に必要な結果を得ることができた.よって,概ね予定通りに進捗しているとみなすことができる.
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今後の研究の推進方策 |
入口ノズル及び出口流路形状の影響について引き続きCFD解析を行い,翼列を付加した場合に適した流路形状の検討を続ける.一方,実験機の製作については,まず翼列複合ディスクの設計及び製造方法について検討を進める.設計については,今年度得たCFD解析結果を元に,まず基準形状となるものを試作する.製造方法については,3Dプリンタ,ハーフエッチング,MEMSといったいくつかの製造手法の候補を念頭に,ディスク製造の可否を検討する.そして,翼列複合ディスクの製造に成功すれば,オリジナルのテスラタービンと作動特性や効率がどのように変化するかを中心に,作動試験を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施した出張旅費が事前の計画よりも高額にならざるを得なかったために,物品の購入計画を変更した結果,最終的な残額に差が生じた.一方,実験装置の試作を依頼する企業の候補のひとつと打ち合わせを行ったところ,翼列複合ディスクの製造に技術的な困難が生じる可能性があることが判明したことから,次年度使用額をその試作費用の一助とする予定である.
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