研究課題/領域番号 |
17K06943
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
添田 建太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30795050)
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研究分担者 |
永田 晴紀 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40281787)
田丸 博晴 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (30292767)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハイブリッドロケット / 光造形 / 応答特性 / 拡散火炎 |
研究実績の概要 |
本研究は,高い燃焼効率や優れたスロットリング特性等の多くの利点を有し,H27-28 年度の挑戦的萌芽研究において本提案者らによって初めて実証された「端面燃焼式ハイブリッドロケット」についての実用化を目指している.本目標を達成するために,平成29年度は下記の3つについて研究を進めてきた. 1.造形燃料の高精度大型化:3D プリンタによる燃料造形において,高い生産性で,高精度,大型化が可能な造形条件を見出した. 2.応答特性の解明:様々な推力履歴でスロットリング燃焼実験を行い,推力応答特性を明らかにした.バルブを有する酸化剤供給ラインを4つ用意し,バルブのON/OFF制御によって酸化剤流量を増加/減少させて燃焼実験を行った.急激に酸化剤流量を増減させたとき,燃焼室圧力の立ち上がりに大幅な時間(応答時間)を要することが実験によって明らかとなった.応答時間を詳細に検討するために,ニードルバルブ上にステッピングモータを設置しモータ開度によって酸化剤流量を細かく変化させて燃焼実験を行った.酸化剤流量の変化量が大きいときに応答時間も大きくなる関係を実験によって示した. 3.燃焼機構の解明:燃焼速度は火炎から固体燃料への局所熱伝達率で決まり,局所熱伝達率は火炎温度と消炎距離により決まると考えられる.消炎距離は化学反応速度に支配されている可能性が高いが,これを実験的に確認するために,これまでの純酸素に加え,亜酸化窒素を酸化剤とした単ポートでの燃焼実験を行った.燃料後退速度は純酸素と比較すると亜酸化窒素を酸化剤としたとき,1/10程度減少することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記3項目の進捗を研究計画と総合的に比較し,おおむね順調に進展していると判断した. 1.造形燃料の高精度大型化:従来造形していた燃料に対し、直径、全長とも2倍、体積に対して8倍になる大型燃料の量産を達成した(H29年度は100本以上造形).また酸化剤の通路となる内径Φ0.3の細管(ポート)は、小型燃料の85本に対して433本と大幅に増えており、相対的に造形精度が向上している. 2.応答特性の解明:推力制御中の時間応答特性およびヒステリシス特性に関しての実験データの取得は順調である.時間応答特性に関しては,燃料出口端面で形成される拡散火炎群の挙動に関する仮説を立て,燃焼実験でもそれを支持する結果となっている.ヒステリシス特性に関してはヒステリシスが発生する推力履歴の特定ができていない. 3.燃焼機構の解明:研究計画では,酸素と窒素の混合比率を調整することにより,亜酸化窒素の場合と比べて,化学反応速度が同じで火炎温度が異なる条件,または火炎温度が同じで化学反応速度が異なる条件を設定可能であると考えていた.しかしながら,CHEMKINを用いた予備検討の結果、亜酸化窒素の場合の反応速度に揃えた酸素濃度では火炎が伝播する下限を下回ることが判明し、本手法は断念した。これに代えてアクリル中に形成される安定燃焼火炎の詳細な観察および酸素流速が連続的に変化する燃料流路内を燃え広がる火炎の観察を行い、燃焼機構に関する重要な知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
1.造形燃料の高精度大型化:造形燃料の高精度大型化については、ほぼ当初の目標を達成しているが、更なるポート内径の造形精度の向上を目指す。また一度に多数個の燃料造形を行うことで,生産性の向上を進める. 2.応答特性の解明:ヒステリシス特性の解明を行うために,実験的な調査が必要である.燃料内の温度分布がヒステリシス特性に大きく影響を与えている可能性が高い.高圧条件では燃料後退速度が10 mm/s と非常に速くなるため,燃焼室圧力を変えてヒステリシス特性の調査を進めていく. 3.燃焼機構の解明:アクリル中に形成される安定燃焼火炎の観察を更に進める。特に燃料中の温度場に着目し、安定燃焼火炎の進展速度が決定される機構を明らかにする.
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