研究課題/領域番号 |
17K06944
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 客員研究員 (70110773)
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研究分担者 |
安藤 康高 足利大学, 工学部, 教授 (60306107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ反応溶射 / ガストンネル型 / 低電力 / 複合機能材料 / 金属コーティング |
研究実績の概要 |
本年度は、低電力ガストンネル型プラズマ反応溶射装置(3kW以下)の性能の向上、及び、それによるCu粉末、Ti粉末などを用いて作製した金属膜について、皮膜組織・構造、硬度、反応性(酸化、窒化)について明らかにし、1 kW級プラズマ反応溶射装置の可能性を追求した。 低電力ガストンネル型プラズマ溶射装置の改良では(目標:1 kWタイプ)、ノズル電極の内径が12 mm、10 mmの場合、プラズマ電流:20-35 A(1.5 kW以下)、溶射距離20-30 mm、作動ガス流量50 l/min、溶射時間30秒の溶射条件で銅粉末の溶射を行い、80ミクロン以上の膜厚のCuコーティングが得られる適正溶射条件(電流、溶射距離について)を明らかにした。その結果は、平成31年3月沖縄で開催されたプラズマ応用と複合機能材料に関する国際ワークショップ(IAPS2019)で発表した。 また、3 kW級ガストンネル型プラズマ溶射装置を用いてTi金属粉末を溶射し、プラズマ電流48 A、電圧47 V、溶射距離40 mmにおいて、10秒の短時間に200ミクロンの膜厚のTi/TiN/TiO2コーティングを作製した。その溶射プロセスにおける反応性については、X線回折装置によりTiN及び、TiO2の存在を確認した。現在、ガストンネル型プラズマ反応溶射の効率を上げるためのプロセス開発を行うとともに、光触媒機能をもつTiO2複合材料を作製するための準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、開発した小型低電力ガストンネル型プラズマ反応溶射装置について、装置性能の向上を図るため、作製したTiO2溶射膜の品質、反応性の評価をもとにプラズマ反応溶射装置の改善を行う予定であったが、1 kW級プラズマ反応溶射装置によるTiO2膜作製までは達成できた。しかし、装置の改良、溶射実験の準備に時間を取られたため、プラズマ反応溶射実験、Ti粉末の反応性の評価が不十分で、より光触媒機能の高い反応溶射膜の作製、プラズマ反応溶射装置性能向上の目標を達成できなかった。これらは次年度に繰り越した。
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今後の研究の推進方策 |
低電力ガストンネル型プラズマ反応溶射について、チタン粉末を用いた1kW級の低電力でプラズマ反応溶射を行い、作製したTiN溶射膜, TiO2溶射膜の品質、反応性の評価から、1 kW級プラズマ反応溶射装置の改善を行う。また、TiO2金属/プラスチック複合材料については、皮膜の組織・構造の制御、硬さなど機械的特性、傾斜機能性の制御の可能性も明らかにする。特に、プラスチック、Alなど軽量素材について、TiO2複合膜による高機能化を進め、殺菌、有害物質除去など光触媒機能の向上、耐熱性、耐食性などに優れた機能をもつ新しい高機能環境適応型複合材料の設計・作製を目指す。さらに、開発した光触媒複合材料について、宇宙航空部品の軽量化を目指した様々な部材への適用、及び、適用部材拡大を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の未使用額に加え、本年度も低電力ガストンネル型プラズマ反応溶射装置の小型化、改良、反応溶射実験の準備に時間を取られたため、ガストンネル型プラズマ溶射装置による金属粉末(Cu,Ti)を用いた溶射実験を行ったが、前年度同様、実験回数、および実験データが当初計画より少なく、溶射実験のためのアルバイト謝金など人件費が不要になった。そこで、人件費・謝金の費目分の使用額相当を次年度に繰越しする
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