研究課題/領域番号 |
17K06944
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 客員研究員 (70110773)
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研究分担者 |
安藤 康高 足利大学, 工学部, 教授 (60306107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ反応溶射 / ガストンネル型 / 小型化 / 低電力 / 複合機能材料 / 航空宇宙用軽量部材 |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、実験を伴う共同研究ができず、昨年度までの3 kW級ガストンネル型プラズマ溶射装置を用いた高機能Ti/TiN/TiO2コーティングの作製実験のデータを用いて解析を行い、その結果について議論した。特に、ノズル電極の内径が8 mmの場合に、プラズマ入力2 kW(電流48 A、電圧47 V)、溶射距離40 mmにおいて、窒素+酸素の雰囲気中で5 g/min のTi粉末を溶射して得られた膜厚200ミクロンのTi複合コーティングの特性について再検討した。X線回折による分析では、そのコーティングの組成はTiに加えてTiO2 及びTiNが含まれ、複合コーティングとなっているが、その化学組成・構造は、ガストンネル型プラズマ溶射反応プロセスにおいて雰囲気ガス(N2, O2)を変化させることにより、窒化によるTiN、酸化によるTiO2の形成をコントロールできることが再確認された。一方、新機能材料プロセスの開発、医療、生物分野への新しいプラズマ応用のために開発を行っている、1 kWタイプの低電力ガストンネル型プラズマ溶射では、Vortex作動ガス流の効果について、トーチ内外の圧力分布の測定結果から、ノズル電極の内径を10 mmから8 mmにサイズダウンした場合の有効性を議論し、ノズル電極の内径が8 mmの場合、より小さいガス流量で、有効なガストンネルが得られ、プラズマジェットの安定性が向上することを確認した。 以上の結果については、令和2年9月大阪・千里で開催された第27回プラズマ応用科学会年会:IAPS2020、及び、令和3年3月東京・大手町で開催された第28回プラズマ応用科学会年会:IAPS2021においてそれぞれ発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に研究の進捗状況が若干遅れ気味のため期間を1年延長したが、本年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため実験研究が進まず、当初の研究計画が遅れた。具体的には、1 kW級ガストンネル型プラズマ反応溶射の効率を上げるためのプロセス開発と、プラズマ反応溶射によるTi粉末の反応性の評価、及び、より光触媒機能の高い反応溶射膜の作製などの研究について遅れを生じた。そこで、これらの研究項目は研究期間をさらに1年延長して次年度に繰り越した。次年度には、低電力ガストンネル型プラズマ反応溶射によりTi粉末の反応性の評価を行い、光触媒機能の高い反応溶射膜の作製などの追加(再現)実験の実施や、プラズマ反応溶射装置の性能向上を行うとともに、論文投稿、学会等への参加を計画している。 現在までの進捗状況としては、昨年度までの3 kW級ガストンネル型プラズマ反応溶射装置を用いた高機能Ti/TiN/TiO2コーティングの作製実験の解析結果について確認し、令和2年9月の第27回プラズマ応用科学会年会:IAPS2020、および、令和3年3月の第28回プラズマ応用科学会年会:IAPS2021において発表・討議した。
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今後の研究の推進方策 |
低電力ガストンネル型プラズマ反応溶射について、主にチタン粉末を用いた1-3 kW級の低電力でプラズマ反応溶射実験を行い、作製したTiN溶射膜, TiO2溶射膜の皮膜組織・構造、硬度など物理的性質(品質)について再確認し、また、反応性(酸化、窒化)についてはXRDによる分析評価を行い、1 kW級プラズマ反応溶射装置のサイズ、パワーの小型化などプラズマ反応溶射の効率を上げるため更なる性能改善を行うとともに、ガストンネル型プラズマ反応溶射によるプロセス開発を行い、その可能性を追求する。また、TiO2複合材料については、皮膜の組織・構造の制御、硬さなど機械的特性、傾斜機能性の制御の可能性も明らかにし、プラズマ反応溶射によるTi粉末の反応性の評価を行い、より光触媒機能の高い反応溶射膜の作製など、当初の研究目的をより精緻に達成するために、追加(再現)実験の実施を行う。 また、論文投稿、学会等への参加を計画するとともに、TiO2複合膜による高機能化を進め、殺菌、有害物質除去など光触媒機能の向上、耐熱性、耐食性などに優れた機能をもつ新しい高機能環境適応型複合材料の設計・作製を目指し、宇宙航空部品の軽量化を目指した様々な部材への適用、及び、適用部材拡大を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルス感染症の蔓延による緊急事態宣言により研究活動が制限されたため、低電力ガストンネル型プラズマ反応溶射装置を用いた実験研究ができず、溶射実験のための消耗品など物品費、溶射実験のためのアルバイト謝金など人件費が不要になった。そこで、人件費・謝金の費目分の使用額相当を次年度に繰越し、当該年度にプラズマ反応溶射実験、及び、追加(再現)実験の経費や、研究の取りまとめの論文投稿、学会等への参加・研究発表のための経費を計画している。
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