研究課題
酸水素トーチを熱源とした超小型耐熱材料実験系を構築し,定常アブレーションデータを取得した.昨年度構築した酸素アセチレントーチに続き,新しく酸水素トーチを導入することで,本研究で対象としている炭素多孔質基材あるいはその基材にポリイミド樹脂を含浸させたアブレータを加熱試験して,センサー応答特性,特に表面損耗量を当該試験装置で調査できる環境を整えた.新しく導入した熱源環境では,トーチノズルから10~180mmまでの範囲で,火炎軸方向の加熱率分布および表面温度分布を計測した.さらにノズルから軸方向位置を固定して,アブレータに対する定常アブレーション特性を評価し,アーク加熱風洞で得られている結果と比較した.供試体径(12.7mm)がアーク風洞のもの(40~50mm径)より小さいものの,当該装置で得られた平均炭化層厚さ,および平均表面損耗はアーク風洞のそれと同等であることがわかった.さらに,開発した実験系を使って非定常加熱試験を実施した.実験条件を選定するため,いくつかの大気突入軌道加熱条件を調べ,JAXAの弾道突入飛行実験機条件を選定した.計算した淀み点加熱率から輻射平衡条件を介して壁面温度の時間履歴を評価し,これを酸水素トーチ環境において供試体壁面温度として再現した.測定したアブレーションセンサー応答から,定常アブレーションデータとは明らかに異なる非定常データを取得できた.2次元軸対称を仮定した多孔質体内のガス流動の基礎方程式と,固体の伝導-輻射エネルギー方程式を連成して解析する計算コードを開発した.窒素分子の熱化学平衡流れを仮定して,ガス流動解析のためのパラメータを整理し,これまで得ているアーク加熱風洞環境で測定した熱電対データを解析した.その結果,伝導-輻射伝熱過程だけでは再現性が不十分であった温度上昇傾向を,ガス流動による対流伝熱で説明できることを示した.
2: おおむね順調に進展している
計画した非定常加熱試験法の開発,また,多次元の多孔質体内ガス流動-固体エネルギー方程式連成材料熱応答解析手法の開発まで達成することができた.燃焼流計算との材料熱応答連成手法開発は,より複雑な解析となり,研究協力者のコード開発進捗状況も加味して,次年度の測定データ再現性の状況に基づき,実施するか改めて判断することにした.これらにより概ね順調と判断した.
非定常加熱試験での試験条件範囲を広げるため,新たなステージ系の検討を行い,広範囲な条件設定が可能な,地上試験による大気突入環境試験法の構築を目指す.昨年度開発した多次元多質体内ガス流動-熱伝導連成解析法を使って,トーチ加熱試験で得られる熱電対およびアブレーションセンサーデータを解析する.実験データの再現性の程度に応じて,当初計画していた燃焼流との連成解析の実施について研究協力者と相談し,臨機応変に数学モデルの高度化を模索する.年度後半には本研究を総括する.
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Transactions of The Japan Society For Aeronautical and Space Sciences
巻: Vol. 61, No. 5, ページ: 211-218
10.2322/tjsass.61.211
http://www.mech.tottori-u.ac.jp/douryoku/news04.html