研究課題/領域番号 |
17K06950
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田辺 光昭 日本大学, 理工学部, 教授 (90291707)
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研究分担者 |
齊藤 允教 日本大学, 理工学部, 助教 (20801020)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 燃焼振動 / 深層自己符号化器 / ロケット |
研究実績の概要 |
ロケット燃焼器等の燃焼振動問題に対して深層学習を適用し,その駆動機構を明らかにすることを目的とし,昨年度までの検討を踏まえて①DAE(深層自己符号化器)による振動の要素分解での直交化法の開発,②CAE(畳込み自己符号化器)を用いた局所構造の解明,③振動場でのトリプルフレームのLIF(レーザー誘起蛍光)断面計測によるデータ収集,を実施した.①ではDAEによる詳細分析に加え,新たに損失関数の工夫で直交化を達成し,深層学習による独立振動モード分解が可能であることを明らかにした.直交化により,任意の振動モードにおいて,複数パラメータ間の相関を簡単に計算でき,振動を駆動している圧力ー発熱相関の高い場所の特定が可能であることを明らかにした.これらは,国際学会2件,論文1件予定中,発表1件実施,1件は新型コロナウィルス感染拡大(以下,新型コロナ)により延期,論文は審査中である.②では,畳込み層の導入により,より適切に空間構造を捉えることができ,①で曖昧だった振動を駆動している個所の局所構造を調べることが可能となった.国内学会1件の発表を行った.③については,振動モードが理論的に予測されており,より単純な振動を含むトリプルフレームはPOD(固有直交分解)で十分解析可能であることを昨年度までに明らかにしたが,引き続き要素分解性能の検定用の基準データとなりうることを考慮し,LIFの光学セッティングを見直し,火炎断面構造に関する精度の高いデータを収集した.PODで理論で予測していない振動モードが観測され,従来モデルの見直しと,DAEによる新たな解析の必要性を確認した.これについては,国内学会1件の発表を行った. また,昨年度の燃焼学会ワークショップでの実績を受け,学会講習会で,DAEによる燃焼振動解析技術を啓蒙する講師としての講演機会を得るまでに認知度を高めた.(ただし,新型コロナにより流会)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の目標についてはほぼ達成したが,成果公開で遅れを生じている. 目標に関しては,予定した①から③までの3テーマにつき価値のある結果を得ることができ,年度内に研究としての実施内容を達成することができている.特に①のテーマでは論文執筆まで達し,全く新規の手法として開始した解析手法が,ニューラルネットワークの設計における必要条件などを含む完成された一連の手法としてまとめることができた.非線形の複雑系である燃焼振動場の解析で従来のPODやDMDが燃焼振動場の特に空間構造の特徴を検出することが困難であるのに対し,深層学習が新たな手段として利用できる道筋をつけることができたといえる. これに対し,成果公開という点では以下の要因により遅れが生じた.まず新型コロナの影響により,学会発表1件が未達となった.また,投稿論文についても,まだ適切な理解者がほぼ不在であり,ピアレビュープロセスでその妥当性を確認し査読結果を得るまでに半年以上を要すという大幅な遅延が生じた.現在も条件付き採択で校正中である.また,新型コロナの影響は,ピアを増やすための啓蒙活動である講習会にも生じており,学会員への講義も未達となり,理解者を増やしていくという目的も未達である.
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長し,主として情報公開に努める.国際学会での成果公開に加えて,学会の講習会等でも可能な限り啓蒙に努める予定である.新型コロナの影響が長期化する場合に備えて,前述の口頭での成果公開や啓蒙活動に加えて,論文として誌面での成果公開にも努める. また,研究内容についても延長期間を有効利用し,これまでに用意してきた研究リソースを引き続き利用し,DAE解析結果を物理的解釈(燃焼振動そのものの物理モデルの検討)に発展させていくための活動を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:新型コロナ対応で国際学会(AJCPP)発表が延期となったため. 使用計画:2021年1月開催のアメリカ航空宇宙学会SciTechにて国際学会発表を行うほか,現在条件付き受理の論文出版費用に充てる.
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