研究課題/領域番号 |
17K06953
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
熊澤 寿 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (20344252)
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研究分担者 |
横関 智弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50399549)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 構造・材料 / 複合材料 / 極低温推進剤タンク / マトリックスクラック / 推進剤漏えい |
研究実績の概要 |
本研究では、樹脂割れに強く薄い複合材層を活用したリークバリア層を解析的に求め、リークバリア層を含んだ複合材料試験片の極低温負荷試験/漏えい試験による実証を行い、本研究成果を極低温推進剤タンクの複合材料化に活用できることを示す。 昨年度は樹脂割れが発生しにくく、耐漏えい性が高いリークバリア層の特徴を有限要素法を用いて計算した。また、材料定数取得用試験片とリークバリア層を含んだ積層板試験片の設計・製作を行った。 本年度は、複合材料の材料定数の温度依存性を取得し、それらの材料定数と隣接層の樹脂割れも考慮したリークバリア層の損傷解析を行い、薄層を用いたリークバリア層の効果を数値解析的に確認した。また、薄層を用いたリークバリア層の対漏洩特性を常温において実証した。 材料特性取得用複合材料試験片を用いて、各温度での一方向複合材料の0度方向と90度方向の熱膨張率と弾性率を測定し、測定した材料定数を数値解析モデルに適用した。損傷解析モデルにおいては、通常層厚部にまず亀裂が発生するが、層厚が薄いリークバリア層で高い荷重まで亀裂が発生しないため、漏洩の発生が起きにくいことを解析的にも確認した。解析においては、リークバリア層内の薄層に対して通常層厚の層の亀裂が及ぼす影響も考慮した。 リークバリア層を含んだ十字型積層板試験片を用いて、繰り返し負荷による漏洩特性の取得を行った。比較のために、リークバリア層を含まない試験片を用いた漏洩特性の取得も行った。本年度は、常温における漏洩特性を測定し、その結果、リークバリア層がない積層板に比べ、リークバリア層を含む積層板は高い負荷が加わるまで漏洩が発生せず、発生した漏洩量も少ないことが実験的に実証された。漏洩が発生した試験片は、超音波探傷や断面観察により亀裂を確認したが、リークバリア層の亀裂を明瞭に確認はできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、数値解析と実験からなっており、解析については計画通り進んでいる。 実験に関しては、平成30年度製作予定であった漏洩特性取得用試験片を平成29年度に前倒しで製作し、平成29年度実施予定であった材料特性の温度依存性の取得を平成30年度実施した。実施タイミングが入れ替わったが、2年目までに実施する項目については、予定通り終了したため、当初計画通り平成31年度の計画を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
解析のおいては、積層板全体の損傷の影響も考慮した損傷解析法を用いて、リークバリア層の薄層数を減らすことができるかを計算し、より少ない層数で構成される効率的なリークバリア層について検討する。解析においては、極低温環境と二軸荷重も考慮した計算を行う。 実験においては、リークバリア層の対漏洩特性実証を極低温環境に対しても実施する予定である。リークバリア層がある十字型積層板試験片とリークバリア層がない十字型積層板試験片に対して、極低温での繰り返し負荷とガス漏洩測定を行い、それぞれの漏洩特性を取得する。漏洩特性取得後の試験片を用いて、樹脂割れの分布等を取得し、隣接層の亀裂も考慮した損傷解析の有効性の検証も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
極低温試験用の消耗品を一部購入予定であったが、次年度まとめて購入することとしたため次年度使用が生じた。次年度使用する予算は、極低温試験用消耗品購入に充てる予定。
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