研究課題/領域番号 |
17K06959
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
藤野 俊和 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (70508514)
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研究分担者 |
地引 達弘 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40322094)
菅原 隆志 東京海洋大学, 学術研究院, 助手 (90456319)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋環境 / トライボロジー |
研究実績の概要 |
本研究は、海洋環境中で使用可能な耐食性を有し、かつトライボロジー特性(特に摩擦・摩耗・耐焼付性)に優れた摩擦材(以降、海水中用高強度摩擦材という)を、申請者らの研究グループが開発した摩擦改質技術と熱拡散処理を組み合わせて応用し開発しようとする基礎研究である。本研究の目的を達成するために、本年度は耐食性をもつ材料への低摩擦・耐食性の付与についての研究を中心に実施した。
1.被覆層を有する材料の作製 高強度かつ優れた耐食性をもつ材料である18Cr-8Niステンレススチール(SUS304)とTi-6Al-4V(Ti alloy)を基材として、これらの表面と工具の間に、アルミナ(Al2O3)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、窒化チタン(TiN)および窒化クロム(Cr2N)の各種硬質微細粉末とキャリア粉末を混合したものを間断なく送りこみ、局所的高面圧下で摩擦する(摩擦改質処理)ことにより、基材表面に微細粉末による被覆層を創生した。その後、必要に応じて摩擦改質処理を施した材料に浸炭処理または窒化処理を施した。これら熱処理を援用することにより摩擦改質により被覆された微細粉末を拡散接合させて基材との密着性を向上することならびに改質層の高強度化を試みた。
2.評価試験の実施 作製された試験片に対して硬さ測定およびスクラッチ試験を実施し、硬さと硬質微細粉末の密着強度について比較検討した。また表面・表層に存在する粉末粒子の分布状況(拡散浸透の有無)をEDX分析するとともに熱力学データベースソフトウェア「MALT for Windows」を使用して考察した。これらと並行して海水中における浸漬腐食試験ならびに往復動摩擦摩耗試験を実施し、耐食性と耐摩耗性を調べ、本手法の有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、耐食性をもつ材料(SUS304およびTi alloy)への低摩擦・耐食性の付与についての研究を中心に実施する。本年度は「5.研究実績の概要」に述べたように、耐食性材料への各種硬質微細粉末による被覆層を創生することが可能となり、評価試験においても有益な結果が得られた。よって総合的に判断し「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降には、工業上多用されている材料として主に合金鋼(SCM)を取り上げ、海水腐食の防止ならびに低摩擦と耐摩耗性向上のための被覆と熱処理を試みる。まず鋼と合金化しやすく比較的耐食性と摩耗特性に優れている硬質微細粉末を中心に摩擦改質により被覆する。次に、これらの材料に対する海水腐食を防止するため、犠牲陽極として鉄よりイオン化傾向の高い亜鉛を、申請者らが開発した摩擦成膜法により被覆する。なお亜鉛は船体腐食に対する犠牲陽極材としてしばしば用いられる材料である。これら被覆層に焼入または熱処理を施す。 作製された試料に対して海水腐食試験ならびに摩擦摩耗試験を実施する。得られた解析結果を総合して、海水中で使用できるより安価な摩擦材の開発へ先駆をつけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な原因は、主に硬質微細粉末を有効に利用できたことによりその購入金を抑えられたこと、ならびに計測データを収集解析するためのデジタル記録システムの購入を次年度に繰り越したことである。次年度使用額と翌年度分として請求した助成金を合わせて、これらデジタル記録システムの購入と各種硬質微細粉末の購入ならびに摩擦改質により得られた各種改質材のEPMAによる表面元素分析等について外注を含め精力的に実施し研究を更に発展推進する予定である。
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