研究課題/領域番号 |
17K06960
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
井関 俊夫 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70212959)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 波力発電 / 浮体動揺 / スパー型ブイ / パラメトリック励振 / マシュー方程式 |
研究実績の概要 |
研究代表者による先行研究(基盤研究C:23560966)では、マシュー型不安定に基づくパラメトリック励振を波浪発電に利用することを目標とし、スパー型ブイの1自由度上下揺れを研究対象としてきた。本研究課題では上下揺れと縦揺れの2自由度連成運動を対象として、復原力制御によるパラメトリック励振発生に関する基礎的研究を行っている。具体的には、 (1)ブイ模型の製作と水槽実験、 (2) 動揺制御システムの開発、(3)数値シミュレーション・プログラムの開発の3 項目について研究を進めている。平成29年度の研究実績は以下のとおりである。 (1) スパー型ブイの2自由度運動を研究対象とするために、新しいスパー型ブイ模型の製作を行った。ブイ本体内に上下移動可能なバラストを配置し、縦揺れ固有周期を自由に変更し、上下揺れとのパラメトリック励振発生の特性を明らかにする実験を行った。これらの結果を論文にまとめ、海洋再生エネルギー研究に関する国際学会CORE2018で発表する予定である。 (2) 上記の新型ブイ模型の内部には、ステッピングモータとボールスクリュー機構を用いて、バラスト昇降装置を開発した。この装置によって、スパー型ブイの上下瑶固有周期を変更することなく、縦揺れ固有周期のみを変更することが可能となった。現段階では、外部からの制御信号によってバラストが上下するだけであるが、今後、上下揺加速度センサー等の信号を入力として、縦揺れ復原力のダイナミック制御システムに発展させる予定である。 (3) 先行研究(基盤研究C:23560966)後に行った1自由度実験結果から、1自由度のパラメトリック励振の波力発電応用は困難であるとの結論に達したため、その結果をOMAE2017で発表するとともに、理論的なエネルギー回収率と不規則波中数値シミュレーション結果をまとめて、MARTECH2018で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では、動揺特性推定の基礎データ取得のために、自由動揺実験を主として行った。実験は東京海洋大学船舶運航性能実験水槽において規則波を発生させ、上下揺れと縦揺れ以外の運動を拘束するためにガイド装置を製作して行われた。これによって、計測上の障害となるブイ本体の回転や横方向への漂流を抑えることができた。実験結果としては、マシュー方程式の近似解とは異なり、上下揺れが最初に発達し、そのエネルギーがあるタイミングで縦揺れに移行して、過大な縦揺れが突然発生する現象をとらえることができた。これらの結果を速報的にまとめて、平成30年8月開催予定の国際学会CORE2018で発表する予定である。また、当初予定では拘束模型試験によって波浪強制力計測のために検力計(3分力検出器)を購入する予定であったが、ブイ模型の寸法が予想より大きくなったため、平成29年度は各種予備実験を多数実施し、検力計の選定を慎重に行うこととし、実際の購入は平成30年度に変更することとした。マシュー型不安定を利用した、パラメトリック励振による波力発電装置効率の理論的推定については、平成29年度中に明解な形に整理できたため、国際学会MARTECH2018で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成29年度に実施できなかった波浪強制力計測実験を行う予定である。製作したブイ模型を用いて規則波中実験を行う予定であるが、平成29年度の実験から明らかになった、急激に縦揺れが発達する現象を解明するために、ブイ模型を静止水面に対して種々の角度で固定する必要が出てきたといえる。波浪強制力計測実験を効率的に実施できるようにブイ模型固定用冶具の設計が重要となる。 さらに、動揺制御システムの開発としては、自由動揺試験において、ブイ本体の動揺加速度を計測しつつ、縦揺れ固有周期変更用バラスト位置の動的制御を行うシステムを構築する必要がある。その際、ステッピングモータの駆動力で十分な追従性が得られるかどうかが主要な検討事項になると思われる。 また、数値シミュレーション・プログラムの開発では、上下揺れと縦揺れの2自由度動揺シミュレーション・プログラムを開発する必要がある。取り敢えず、減衰係数は自由動揺実験で得られた係数を定数として与えてプログラムの完成を目指す。その後、水槽実験結果と比較しつつ、シミュレーションの精度を向上させる。 情報発信としては、平成29年度中に投稿したMARTECH2018とCORE2018で研究成果を発表するだけではなく、2019年開催予定のOMAE2019あるいはISOPE2019での成果発表を計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の研究計画では、拘束模型試験による波浪強制力計測試験のために検力計(3分力検出器)を2台購入する予定であったが、採択時の予算配分額では検力計を2台購入できないことと、ブイ模型の寸法が予想より大きくなったため、検力計の容量を正確に推定するために、平成29年度は各種予備実験を多数実施した。平成30年度中にブイ模型を傾斜させて拘束する冶具を製作するため、検力計の選定も遅滞なく行う予定である。
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