研究課題/領域番号 |
17K06962
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中村 一彦 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (40402086)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水中光無線 / 波長分割多重 / シングルビーム / 水中通信 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,高速・長距離の水中光無線通信システムの実現を目的として,複数の波長の可視光レーザを利用したマルチギガビット・数十メートル~数キロメートル伝送の検討を行う.本年度は,ベースとなる検証用通信システムとして,水中での減衰が比較的小さい青(405nm)・緑色(532nm)レーザを用いたWDM伝送システム構築を主として検討した.信号生成には小型化に寄与できるFPGA+高速DAC,波長合分波にはダイクロイックミラーを利用して,青色光信号,緑色光信号をシングルビームでのWDM伝送できる実験系を構築した.強度変調/直接検出方式による四位相偏移変調-直交周波数分割多重(QPSK-OFDM)伝送を行った結果,10^-3以下のビット誤り率(BER)で484Mbit/s×2の合計968Mbit/sの伝送が可能であることを確認した.今後,光学系の調整や変調方式を直交振幅変調(QAM)に変更することでトータルでの伝送速度2Gbit/s越を目指す.また,長距離伝送を実現するには実際の水中環境での伝送を考慮する必要があるため,プランクトンなどレーザビーム径とほぼ同スケールの浮遊物質がある状況についても検討した.プランクトンには,育成と体長の調整が容易なアルテミアを用いて伝送実験を行った結果,プランクトンの体長と同程度以上のビーム径であれば,瞬時的には誤差ベクトル振幅(EVM),BERが劣化してしまうが,平均EVM,BERは大きく劣化しないことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青(405nm)・緑色(532nm)レーザを用いたWDM伝送システムの構築は予定よりも順調に進み,年度内でほぼ完成するところまで達している一方,MIMO信号処理の適用や,レーザビームの到来方向推定についての検討が次年度に回ってしまっている.MIMO信号処理適用については,先行して構築した実験系を利用して,提案手法の有効性を確認したい.レーザビーム到来方向推定については,現在の実験系とは別の,大型水槽を利用した水中伝送路を用意して平行して検証したい.
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今後の研究の推進方策 |
伝送速度向上のために変調方式をQPSKからQAM方式に変更するには受信SN比を向上させる必要があるが,この点については,1.レーザの変更,2.光学系の調整,で対応することを考えている.また,ダイクロイックミラーでは完全に波長分離ができず他色の漏れ光を確認しているがこれはほかチャネルからの干渉となりEVM,BER廉価の原因となる.こちらはMIMO信号処理を適用することで波長分離での損失を減らすことが可能であり,すでに構築した実験系を利用してその有効性を検証する.ビームの到来方向推定に関する検討については,現在の実験系とは別の水槽を利用してレーザビームの散乱光を撮影して検証する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度については,実験系の構築は順調に進んだが提案システムの主要技術の一つであるMIMO信号処理の適用が未完であったため,予定していた研究成果発表まで進めることができなかった.次年度使用額については,初年度に計画していた研究成果発表に使用する予定である.
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