研究課題/領域番号 |
17K06963
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高木 洋平 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40435772)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 乱流 / 抵抗低減 / 船底塗料 / 乱流渦構造 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
機能性船底塗料の一つであるハイドロゲル塗料による摩擦抵抗低減効果を明らかにするために、平成29年度に引き続き、回流水槽における抵抗試験及び数値計算によるハイドロゲル塗料のモデルシミュレーションを行った。回流水槽における抵抗試験では、水和型塗料と非水和型塗料の2種類を用意し、平板模型にそれぞれの塗料を塗布して水槽試験を行った。さらに、平板前縁部分にスタッドによる乱流促進装置を取り付け、層流境界層・乱流境界層での抵抗低減効果の依存性を調査した。回流水槽における設定流速は最大1.0 m/sであり、計測されたレイノルズ数は乱流促進装置がない場合、層流-乱流遷移の領域に該当していた。乱流促進装置の有無を比較すると、層流-乱流遷移が起こっている領域の抵抗低減効果が顕著であることがわかった。対応する数値解析を平行平板間乱流を対象として実施し、ハイドロゲルのモデル化には多孔質媒体によるDarcy-Forchheimer則を適応し、ハイドロゲルの特徴的な性質である水和性を、多孔質媒体への流体透過性の設定によって模擬した。さらに、塗膜表面粗さを塗膜面領域のランダムブロック形状によって考慮し、粗さの波長長さも変更した解析を実施した。表面粗さのスパン方向・流れ方向に対する波長長さを変更することにより、壁面近傍の乱流渦に対応した波長組み合わせによって抵抗低減効果が高くなることがわかった。摩擦抵抗は塗膜を塗布しない平滑面に比べて低なる条件は存在しなかったが、塗膜表面の性質を変更することによって平滑面での摩擦に近づけることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に関しては、当初予定では循環型平行平板水路を製作する予定であったが、所属機関が保有する回流水槽での平板抵抗試験で代替することが可能であったため、抵抗試験に関しては順調に実験を行うことができ、繰り返し測定も実施することができた。対応する数値シミュレーションでは平行平板間乱流での解析であるため、実験結果との直接的な比較は不可能であったが、実際の塗膜表面粗さを考慮した数値解析をパラメトリックに実施することができ、実際に抵抗低減効果が現れることを確認できている。以上の観点より、本年度までの研究進捗はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
回流水槽での抵抗試験では、現在までに出力された抵抗値を平均した結果を考察しており、塗料性質による統計平均的な抵抗低減効果の比較のみを行っており、乱流変動と塗膜表面性質の議論を行っていない。そのため、今後の研究では、時系列抵抗出力値のフーリエ解析を実施し、さらに壁面近傍での圧力変動を測定できれば、表面粗さと乱流渦の相関についての知見が得られると予想される。また、数値計算では平行平板間乱流から平板境界層乱流への解析モデルの変更を実施し、実際の実験結果を説明可能な計算データベースを構築する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施計画では循環型平行平板水路を作製するために、装置・治具等の購入ための物品費を多く計上していたが、所属機関が有する回流水槽での平板抵抗試験で代替試験を実施しているため実施計画よりも物品費が大幅に減少した。翌年度に繰り越した助成金は、圧力変動計測装置の購入または作製、抵抗試験体の改良、試験塗料の購入に主に使用する。また旅費については、国際学会(ASME2019 AJKFluids, San Francisco)での成果発表に利用する。
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