研究課題/領域番号 |
17K06965
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
肥後 靖 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (20156582)
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研究分担者 |
岩下 英嗣 広島大学, 工学研究科, 教授 (60223393)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 積分方程式 / Green関数 / 低速近似 / 流体力 / 動的応答 |
研究実績の概要 |
本研究の土台である低速近似の考え方に基づき、積分方程式の核関数であるGreen関数とその解である速度ポテンシャルを潮流速度Uで展開し、Uが十分に小さいとの仮定の下に低速潮流の速度を考慮したGreen関数(速度0の場合のGreen関数+速度の影響による付加項から成る)および積分方程式から速度Uの高次項を無視した定式化を行った。次に、当該定式化に基づいた数値計算コードを開発した。この際、速度が0の場合の波浪のみを環境外力とする洋上浮体に働く流体力と動的応答を算定する数値計算コードは既に開発済みであり、その妥当性は過去の実験で検証されているので、本研究の数値計算コードは当該既存の計算コードを改訂する形で開発した。基本的には、低速潮流近似は、速度が0の場合の問題の解と速度の影響を考慮した問題の解との足し算で表現されるため、当該既存の計算コードに速度の影響項を付け加えるという改訂になる。しかし、開発した数値計算コードによって計算された核関数(低速を前提としたGreen関数)について検討したところ、物理現象に対応しない結果となった。具体的には、波源から遠くなるにつれて波は減衰して次第に振幅が小さくなるべきであるのに、計算では波源からの距離減衰が見られなかった。さらに定式化した低速Green関数を停留位相法によって数学的に減衰するかどうかを検証したところ、確たる結果を得られなかった。以上のことから、低速近似の定式化に不備があると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のように、積分方程式の核関数である低速近似で定式化したGreen関数に物理的不合理が判明し、その定式化見直しと、妥当性の検証をやり直さなければならなくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の結果を受け、まず低速近似の定式化を見直す。さらに、定式化の検証の方策として、速度を考慮した厳密なGreen関数からK1波を無視した疑似低速核関数(低速の場合、K1波の寄与が少なく、数値計算をする上でK1波の寄与による部分の計算に労力がかかるという二点を考慮した)の計算結果とを比較することで妥当性を検討する。さらに、原点回帰のために、複雑な形状の洋上風力発電装置のプラットフォームを対象とするのではなく、より簡単な形状の船舶を使用した実験(強制動揺試験によるラディエィション流体力の計測、波浪強制力計測試験、波浪中運動計測試験)を行い、計測結果と、数値計算結果を比較することによって、定式化及び数値計算コードの妥当性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、定式化の再確認のために単純な形状の浮体模型(船型模型)を使用した実験を実施する必要性が生じ、そのための費用として使用する。具体的には、実験遂行のための設備を整える費用および謝金等である。
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