研究課題/領域番号 |
17K06973
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
小林 充 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (10373416)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウェザールーティング / AIS / データ同化 / 海流 |
研究実績の概要 |
用語の正確性を期すため、ウェザールーティングの高精度化を目的として、船舶のドリフトを推定する場合は海流推定ではなく「偏流推定」とする。 偏流推定のための近傍AIS計測データを利用するにあたり、時空間ずれに対する重みを低減させる係数の設定が未定だったため、これを最急降下法により決定する手法を提案し、導入して誤差の低減を図った。これにより、関東~九州にかけた太平洋沿岸域における船舶による偏流観測値に対する偏流推定値の誤差は、従来のJCOPE-T海流推定を偏流とみなした場合と比較し79%となり、従来の偏流推定手法より誤差を低減させることができた。 また、推定アルゴリズムを数学的に検討しなおした。推定過程における行列の固有値と固有ベクトルが、偏流推定におけるコスト関数の極小点周辺の傾きが極大・極小となる方位とその傾きを示すことがわかったので、これを用いて偏流推定における幾何学的特徴を得ることができるようになった。また、これまで経験的に、推定値が安定的であることの条件として行列式の値が閾値より大きいことを用いてきたが、検討の結果、行列式はコスト関数の底の部分の広さの逆数であり、推定値の動きにくさを表していることがわかった。既存の気象データ同化手法をそのまま適用するには、AISから得られる偏流データが偏流ベクトルの特定の一成分を表すものであるなど数学モデルが特殊であるため、既存手法をそのまま適用できないことが課題であったが、幾何学的な特徴を得ることができるようになったためデータ同化手法の適用が今後進むものと考えられる。 来年度はこれを用いて、既存の海流推定とのデータ同化を行い、広域的な偏流マップを作成することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サービスとして提供でき利用されるようになるために必要な技術要件を着実にクリアしてきている。 また本件で使用している手法は本件開始前より特許出願していたが、権利化された(特許6300344)
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今後の研究の推進方策 |
現在のAISのみを用いた推定ではAIS受信件数の少ない海域では十分な精度で推定できないため、欠けの海域ができてしまい、ウェザールーティングに利用されるためには不十分である。これからは、既存海流推定とデータ同化することで欠けのない偏流マップを作成し、偏流観測値を正として最適化して精度検証し、サービスとして利用されるための技術的条件のひとつをクリアする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究補助員が死亡につき分担できなくなった。研究の大筋では影響はないが小さい部分に若干未完の部分が生じたため、次年度に研究補助員を手当てし当該業務を行う。
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