研究課題/領域番号 |
17K06974
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
大橋 厚人 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (20358394)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PM計測 / 振動 / 衝突 / 沈着 / 再飛散 |
研究実績の概要 |
本研究は、PM計測における排気導入管の改良を目的とする。改良の方法として、加振器や舶用ディーゼル機関で発生する振動を利用し、排気導入管に振動と、振動に起因した衝突を起こさせ、排気導入管内に沈着した炭素粒子の再飛散を促進し、沈着と再飛散を相殺することにより損失を防ぐことを提案する。 平成30年度は、1:炭素粒子発生装置で発生させた粒子を排気導入管で使用しているステンレス管の直管に流すとともに、これへ加振器により振動・衝突を加えて沈着や再飛散を観察する実験と、2:実際のPM計測系で実験機関からの粒子を使用し、排気導入管(二重管)の内管を外管に衝突させる構造を組み込み、沈着や再飛散を観察する実験を行った。 1:において、前年度に確認できなかったステンレス管内の粒子沈着が確認できた。沈着した粒子がその後の沈着を促進することにより、捕集時間の増大とともに捕集率が増大することが分かった。再飛散した粒子は粒径が大きく、フィルタ捕集時に黒い点を作り、このことが排気導入管内での再飛散の有無の判断基準となることが分かった。これらの内容を、日本マリンエンジニアリング学会において口頭発表を行った。粒子を捕集したステンレス管へ加振器により振動と衝突を加えた実験では、再飛散を確認できたが、相殺条件は見つからなかった。排気導入管がどのように振動するかについて、加振器により実験を行った。 2:において、衝突on-off操作をする機構を組み込んだ排気導入管を試作し、3回改良した。衝突を制御することができなかったが、問題点を明らかにできた。実験機関のPM計測位置において、排気導入管の内管を振動させるために利用可能な振動にを調べるため、振動計測を行った。 平成29年度の取得した比較実験に使用するPM捕集装置の複製に関する基礎データを、日本マリンエンジニアリング学会誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素粒子発生装置で発生させた粒子の実験から再飛散は観察できたが、沈着と再飛散を相殺させる条件は当初予定した条件では見つからなかった。したがって、購入した加振器の設定可能範囲内で実験条件を拡張し、次年度に実験を行うこととする。 また、次年度の排気導入管の改良では、振動に起因した内管と外管の衝突をon-offできると考えるが、この方法により“PM計測における排気導入管の改良”が達成できかかどうかについては、基礎実験からは確認できなかった。一方、今年度の実験から、沈着した粒子が沈着を促進することを確認し、このことが排気導入管内の損失を促進していることが分かった。したがって、沈着と再飛散を相殺することができないのであれば、沈着した粒子を除去することが排気導入管の改良につながると考え、次年度対策を検討することとし、(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた知見から、二重管の内管が外管に衝突し、これをon-offできる排気導入管を製作し、舶用ディーゼル機関からの粒子により、沈着・再飛散の様子を観察する.沈着・再飛散の観察は、光音響法または粒径計測装置を使用することとする。 加振器で設定可能な範囲まで実験条件を拡張し、炭素粒子発生装置で発生させた粒子をとステンレス直管に捕集させ、これの再飛散を促進させる条件を実験により求める。 炭素粒子発生装置で発生させた粒子をステンレス直管内に捕集し、これにマスフローコントローラで制御した空気を流し、再飛散させるための条件を調査する。さらに、この条件をPM計測系に組み込んで活用する方法を検討する。 以上の改良の取り込んだPM計測系と、これまで使用してきたPM計測系とで比較実験を実施して、改良の効果を検証し、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
炭素粒子発生装置で発生させた粒子濃度の変動が大きかったため、SUS管の入口と出口の濃度差を求める方法に加えて、SUS管の内部に沈着した粒子をフィルタに回収する実験も行った。そのため、より面積の大きなフィルタが必要となった。前年度購入した振動計用センサが健全であったため、今年度予定していたセンサの追加購入を中断して、フィルタの購入費用とした。しかし、このフィルタの在庫が所内にあったため借用し、この分が繰越金の主要部分となった。次年度、借用したフィルタを返却するこことしており、平成30年度の未使用額も含めて使用する見込みである。
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