研究課題/領域番号 |
17K06977
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
志村 拓也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, グループリーダー (80359140)
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研究分担者 |
樹田 行弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術主事 (60725646)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水中音響通信 / 時間反転(Time Reversal) / 位相共役(Phase Conjugate) / MIMO通信 / マルチユーザ通信 / 空間多重 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、これまでに位相共役波(Phase Conjugate Wave、時間反転波:Time Reversal Wave)を用いた水中音響通信に関する研究を行い、その有用性を示してきた。本研究では、この位相共役通信の特徴を生かして、近年、注目を集めているMIMO通信(多入力多出力通信)やマルチユーザ通信への適用について研究する。特に、適応型位相共役(Adaptive Time Reversal)は、チャネル間干渉、ユーザ間干渉の除去能力が非常に高く、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などのほかの手法に比べて、非常に良好な復調成績が得られると期待できる。 H29年度は、シミュレーション、及び、水槽試験で基礎的な検証を行った。シミュレーションでは、適応型位相共役を用いれば、MIMOの送信チャネル数を受信チャネル数の2/3程度まで増やしても、復調性能が全く低下しないことを示すことが出来た。一方、OFDMによるMIMOでは、数チャネルで性能が急激に悪化し、それ以上はチャネル数を増やせないという結果になった。よって、位相共役によるMIMO通信であれば、従来の手法よりも格段に高速化できると予想される。水槽試験は、指向性のある送波器を用いて側壁の影響を除去した試験と、無指向性の音源を用いて3次元の影響も含んだ試験を行った。前者の試験では、シミュレーションと同様に、位相共役であれば、性能を劣化させることなく、送波チャネル数を増やせることが示せた。また、後者の試験では、3次元のきわめて強い残響の下で、OFDMでは全く復調が出来ないのに対し、位相共役では、問題なくチャネルが分離され、空間多重通信が可能であることを示せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、シミュレーション、水槽試験による検証を進め、おおむね順調に進展していると考える。さらに、移動体とのマルチユーザ通信については、低周波を用いた実海域試験のデータを解析し、①位相共役によってマルチパス波ごとに異なるドップラーシフトが一つに集約されること、②この性質が適応型位相共役によるマルチユーザ通信においても保持されることを示すことが出来た。また、MIMO通信についても、低周波による実海域試験の受信データを加算することでMIMO通信のデータを模擬し、解析を行った。その結果、OFDMによるMIMOでは全く復調が出来ない一方で、位相共役によるMIMOであれば、加算によるSNRの低下があるにもかかわらず、BPSKで8チャネル、QPSKで6チャネルまでの分離が可能であることを示せた。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、水槽での試験において、移動体とのマルチユーザ通信試験、波浪中のMIMO通信試験などを行う予定である。また、H31年度に行う実海域試験に向けて、海域の選定、送波アレイ、受波アレイの準備などを進める予定である。
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