• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

漁船の健康寿命延長を実現する次世代型状態監視・診断システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K06979
研究機関国立研究開発法人水産研究・教育機構

研究代表者

太田 博光  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (80399641)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード漁船 / パラボラ集音マイクロホン / 合成波形分離法 / 診断 / 転がり軸受 / 滑り軸受 / 信号処理 / 健康寿命
研究実績の概要

漁船の健康寿命延長を実現する次世代型状態監視・診断システムの開発である.基盤となる技術は研究代表者が提案している「パラボラマイク」と「合成波形分離」を用いた高効率,高精度な状態監視手法である.本手法はパラボラマイクの集音特性を利用し,回転機械損傷時に発生する低周波の回転周波数成分の強度に着目することで,複数の機械設備の中から状態監視対象のみの機械設備を同定することができる.その後「合成波形分離」を用い損傷信号のみの抽出が可能な手法である.今回,新たな提案課題では音源を同定し,抽出するのは低周波の回転周波数成分ではなく機械設備の潤滑状態が悪化し摺動面同士の直接接触時に発生する摺動性超音波振動である.超音波の場合,解析的に算出可能な回転周波数とは異なり発生する正確な周波数が明らかになっていないため音源の同定を行い,その中から損傷信号のみを効率的に抽出することは不可能であった.しかしながら, 提案課題では実験的に摺動性超音波振動のみを抽出し発生帯域と発生量の定量化を行う事ができる. 本年度,平成30年度は状態監視対象として損傷の発生しやすい摺動部が存在する転がり軸受,滑り軸受を選択している.転がり軸受試験機,滑り軸受試験機では摺動性超音波振動の正確な発生帯域と発生量の定量化を行っている.さらに滑り軸受試験機に用いた潤滑油を採取し,その中に含まれる摩耗粉粒子数から潤滑油の性状を求めている.さらに各摺動部表面の電子顕微鏡観察により損傷程度を確認した.これらの参考にしながら診断上重要な閾値の設定を行っている.診断の閾値は潤滑状態を「最優良」「優良」「正常」「初期汚損」「中期汚損」「末期汚損」の6ステージに分類し, 直観的に判断しやすくした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

重要機械設備の保全政策は損傷を前もって予防する予防保全が前提である.これは損傷を早期に発見する損傷反応型の保全政策に加え,損傷の元となるストレスの監視,診断を行い取除く損傷原因除去型保全が保全政策として最適である.漁船は他の船舶に比べコスト的にも マンパワー的にもメンテナンスが行き届いていない傾向があるため上記の保全政策に基づく「健康寿命延長を実現するための状態監視・診断システム」が必須である.現状では状態監視対象となるピストン-シリンダライナ機構,転がり軸受,滑り軸受の状態監視・診断では損傷の検出が主流であり,潤滑油を採取すること無しに簡便に潤滑状態を推定する技術を実用化することは困難であった.本研究では損傷が発生する前に損傷の要因を監視・診断する機能を新たに加えることで健康寿命の延長,安全安心な操業,高効率化による省エネルギーを実現させる状態監視・診断システムの開発を行うことを目的とする.平成30年度は状態監視・診断の対象であるピストン-シリンダライナ機構, 転がり軸受,滑り軸受各試験機に使用する潤滑油の種類,温度,各試験機の駆動回転数,負荷荷重を変化させ,油膜厚さと摺動性超音波振動の正確な発生帯域の同定および発生量の定量化を行っている.さらに実験後の潤滑油性状の化学的な分析および各試験機の摺動面の電子顕微鏡観察から診断の閾値を設定し潤滑状態を「最優良」「優良」「正常」「初期汚損」「中期汚損」「末期汚損」の 6ステージに分類している.本年度,平成30年度は潤滑状態を示す6ステージの閾値設定に関わる実験を継続しており,高精度かつ高信頼性な状態監視・診断システムを構築している事から,当初の計画通りである.よって本提案課題はおおむね順調に進展しているものと考えられる.

今後の研究の推進方策

最終年度となる本年度,令和元年度は研究代表者の所属する水産大学校の練習船 耕洋丸の機関室に設置してある発電機,循環水ポンプのピストン-シリンダライナ機構,転がり軸受,滑り軸受を対象として提案手法の実用性を検証する.具体的には発電機,循環水ポンプの油面レベルを低下させ,負荷を増加させる加速試験を行う.潤滑状態を示す6ステージの各ステージ相当する閾値まで変化させ試験終了後に潤滑油を採取する. 採取された潤滑油の摩耗粉粒子数などを解析することで提案手法との整合性を検証する. 検証後,実用性が確認されれば提案手法に関する特許出願を行い,携帯型診断装置に本機能を搭載し試作品の製作を行なう.

備考

水産大学校 教員研究情報データベースでは「海洋機械工学科」,「海洋機械学講座」にチェックを入れ,研究代表者である教員氏名 「太田博光」を参照願います.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 周波数領域自己回帰モデルを応用したバケットエレベータ低速転がり軸受の状態監視・診断法 ― 稼働中のプラント内実機に適用した場合の実用性 ―2019

    • 著者名/発表者名
      太田博光, 松田弦也, 町島祐一, 福永 哲, 松山恵也
    • 雑誌名

      日本設備管理学会誌

      巻: 31巻3号 ページ: 21-29

    • DOI

      ISSN 0915-5023

    • 査読あり
  • [雑誌論文] AE法によるバケットエレベータ軸受損傷検知の高精度化2018

    • 著者名/発表者名
      太田博光
    • 雑誌名

      非破壊検査

      巻: 67巻10号 ページ: 507-512

    • DOI

      ISSN 0367-5866

    • 査読あり
  • [学会発表] 滑り軸受に発生する自励振動オイルホワールの振動解析2019

    • 著者名/発表者名
      太田博光, 田村賢, 椎木友朗
    • 学会等名
      日本設備管理学会 平成30年度 第3回 最新設備診断技術の実用性に関する研究会
  • [学会発表] 回転機械を対象とする音響診断高精度化に関する一考察2018

    • 著者名/発表者名
      太田博光, 椎木友朗, 渡邉敏晃, 徳永憲洋, 中村誠, 福井良輔, 山田雄太
    • 学会等名
      日本設備管理学会 春季研究発表大会
  • [学会発表] 水素燃料電池船の振動特性2018

    • 著者名/発表者名
      福井良輔, 太田博光, 川崎潤二, 高橋竜三, 三好 潤, 溝口弘泰
    • 学会等名
      日本設備管理学会 春季研究発表大会
  • [学会発表] Characteristic of self-excited vibration about sliding bearings2018

    • 著者名/発表者名
      福井良輔, 太田博光
    • 学会等名
      The 24th Joint International Symposium between National Fisheries University and Pukyong National University
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Novel condition monitoring and diagnosis method using parabolic sound reflector microphone for rotary machinery2018

    • 著者名/発表者名
      山田雄太, 太田博光
    • 学会等名
      The 24th Joint International Symposium between National Fisheries University and Pukyong National University
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 周波数領域自己回帰モデルの応用したバケットエレベータ低速転がり軸受の高精度状態監視・診断法2018

    • 著者名/発表者名
      太田博光, 田村賢, 椎木友朗
    • 学会等名
      日本設備管理学会 平成30年度 第2回 最新設備診断技術の実用性に関する研究会
  • [学会発表] パラボラ集音マイクロホンと合成波形分離法による動機器の高効率状態監視・診断法2018

    • 著者名/発表者名
      長橋尚也, 太田博光, 殿明栄志, 山田雄太, 福井良輔
    • 学会等名
      日本設備管理学会 秋季研究発表大会
  • [学会発表] パラボラ集音マイクロホンと合成波形分離法による複数クーリングタワー減速機の高効率状態監視・診断法2018

    • 著者名/発表者名
      山田雄太, 福井良輔, 長橋尚也, 太田博光, 松田弦也, 椎木友朗
    • 学会等名
      日本機械学会 第17回 評価・診断に関するシンポジウム
  • [学会発表] High efficiency condition monitoring for reduction gears of the plural cooling towers based on a parabolic sound reflector type microphone and separation method of composed sound2018

    • 著者名/発表者名
      福井良輔, 太田博光
    • 学会等名
      The 5th Joint International Symposium between National Fisheries University and Shanghai Ocean University
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 水産大学校 教員研究情報データベース

    • URL

      http://perch.fish-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi