研究課題
本年度はまず,岐阜県根尾地域に分布する鉄マンガン鉱石の採取を行った.また,既に確保済みの高知県国見山地域,高知県安芸地域およびキプロスの鉄マンガン鉱石試料について,薄片観察,粉末X線回折(XRD),蛍光X線分析装置(XRF)および誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いた基礎記載・全岩化学分析を行い,基礎データの蓄積を行った.さらに,これらの試料について(1) 試料の粒径,(2)リーチング液の種類,(3)リーチング時間,の条件を変えた化学リーチング実験(全120パターン)を行い,最も効率のよいリーチング条件の把握を行った.その結果,以下の成果が得られた.(1)安芸およびキプロスの鉄マンガン鉱石のレアアースホスト相はアパタイトであり,塩酸・硫酸いずれの酸を用いても80~100%近いレアアースを回収することが可能である.また,比較的大きめの粒径でも充分な抽出率が得られた.(2)一方,国見山鉄マンガン鉱石のレアアースはマンガンのケイ酸塩鉱物と共存していると考えられ,リーチングによる抽出率は40%程度と低い.また,最小の粒径でもリーチングの効率は上がらなかった.(3)国見山の試料は付加プロセスで強い変成作用を受けており,かさ密度が大きく,浸透率が低い.逆に,変成度の低いキプロスの試料はかさ密度が小さく,浸透率が高いことも明らかとなった.このような物理的要因もレアアースの抽出率に大きく関わっていると考えられる.(4)以上の結果から,アパタイトをホスト相とする低変成の鉄マンガン鉱床が開発対象として最も有望であるといえる.
1: 当初の計画以上に進展している
本年度行った基礎記載・全岩化学分析・化学リーチング実験により,「アパタイトをレアアースホスト相とする,より低変成の層状鉄マンガン鉱床」であれば,効率的なレアアース回収が可能であることが明らかとなった.また,よりコストの低い硫酸を用いたリーチングでも十分にレアアースを抽出できることも分かった.このような成果から,付加体中の層状鉄マンガン鉱床が,有望かつ即効性のある新規レアアース資源として開発の対象となりうることを示すことができた.以上のことから,本研究は当初計画以上に進展しているといえる.
平成30年度はまず,「アパタイトをレアアースホスト相とする,より低変成の層状鉄マンガン鉱床」に着目し,確保済みの鉱床や新規鉱床から得られた試料について,基礎記載・全岩化学分析・化学リーチング実験を行い,平成29年度に明らかとなった結果について検証を進める.
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Resource Geology
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