研究課題
本年度は,これまで得られた日本およびキプロスの層状鉄マンガン鉱石試料について,粉末X線回折(XRD),蛍光X線分析装置(XRF)および誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いた基礎記載および全岩化学分析結果を取りまとめ,鉄マンガン鉱石試料に関する高効率なレアアースの化学リーチング手法の確立をおこなった.その結果,本研究対象とした鉄マンガン鉱石はいずれも過去の海洋で堆積したレアアース泥の一部であり,一部を除いてレアアースのホスト相は生物源リン酸カルシウムであることが明らかとなった.そのため,現世のレアアース泥で確立されたレアアース抽出手法を適用することにより,塩酸や硫酸を用いて80~100%に近いレアアースを回収できることが分かった.また,かさ密度やP波速度などの物理特性の計測結果から,鉱石が受けた付加や続成による変成度も抽出率に大きく影響されることも明らかになった.さらに以上の結果を踏まえて,日本列島付加体中の鉄マンガン鉱床のレアアース資源ポテンシャルの推定を行った.地質調査および文献調査の結果,これまでに報告されている日本の鉄マンガン鉱床の残存鉱量は最大で740万トン程度であり,この時のレアアース資源量は総レアアースで5,500トン (レアアース酸化物トン,総レアアース濃度=740ppm, レアアース抽出率90%で計算) であることが明らかとなった.これは現在の日本のレアアース消費量のせいぜい3分の1程度であり,鉄マンガン鉱床のレアアース資源としてのポテンシャルはあまり高くない.したがって,付加体中の鉄マンガン鉱床をレアアースの新資源として用いる場合,『リン酸カルシウムをホスト相とする低変成の鉱床』が開発対象となりうるが,分布の連続性の悪さと鉱量の少なさが,実開発にとって大きな課題となる.
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