本研究では,リン酸塩ガラス異常現象(メタ組成付近における組成-物性間の非線形現象)を示すMgO-P2O5(MP)系ガラスを用いたCs含有粘土鉱物のガラス固化と,Csの選択的な溶出と回収の可能性を検討した. 50mmol/LのCsNO3水溶液100mLに対し,カオリナイト5gを混合し24時間振とうを行った.その後,ろ過を行い得られたろ物を90℃で24時間乾燥し,Cs含有カオリナイト(CsKa)とした.CsKa10および20mass%固化体では,XRDパターンよりアモルファスハローを示したため,CsKaはガラス固化されたと考えられる.MgO:P2O5=50:50(モル比)組成のガラスへのCsKa30mass%固化体(MP5050CsKa30)ではSiO2(cristobalite)とMg2P2O7,MP4753CsKa30ではSiO2の回折ピークが観察された.MP4060CsKa40とMP3565CsKa40ではSiO2とMg2P2O7,MP2575CsKa40ではSiO2のみの回折ピークが観察された.このことより,CsKaの固化限界は,母ガラスにMP5050・MP4753を用いる場合では20mass%,MP4060・MP3565・MP2575では30mass%程度であることがわかった. CsKa10固化体のDTA曲線は,MgOの割合が増えるにつれて,ガラス転移温度は一定なのに対し,結晶化開始温度は低温側にシフトした.そのため,MgOの割合が増えるにつれてガラスの安定性が低くなり,分相し易いことがわかった.XRD測定の結果より,溶出実験前後のいずれのサンプルでもCsはアモルファス相に分配されていることがわかった.
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